ゲームクリエーター・田尻智(1) 人気ポケモンの生みの親

話の肖像画
田尻智さん(松本健吾撮影)

 〈世界中で人気のゲームソフト「ポケットモンスター(ポケモン)」を考案し、平成8年にシリーズ第1作を発売した。それから22年余り、アニメやカードゲームなどさまざまに“進化”するポケモンを、原案者として支え続けている〉

 ポケモンを世に出す前から、普通の大人が普通にゲームをするような、そんな時代になればいいと思っていました。僕がゲームセンターに通っていた中学生の頃は、ゲームといえば非行の始まりで、大人たちから白眼視されていましたからね(笑)。

 ゲームは子供がするものという固定観念も打ち破りたかった。そして今、普通の大人も普通にゲームを楽しむ時代になっています。家庭用ゲーム機や携帯型ゲーム機が普及し、それで遊んだゲーム世代が大人になったこともありますが、優れたゲームがたくさん出てきて、人生を豊かにするアイテムの一つとして広く認められたからでしょう。

 〈28年夏に配信されたスマートフォン向けアプリ「ポケモンGO」は世界的なブームとなり、現在も子供から高齢者まで幅広い世代に親しまれている〉

 確かにポケモンGOは画期的でした。それまでゲームは家の中で遊ぶ、不健康なものだというイメージがありましたが、ポケモンGOによって、遊びのフィールドが一気に広がりましたから。高齢者からも「健康にいいからポケモンGOをしよう」と、そんな声が聞こえてくる。ポケモンを外に連れて歩くというのは、ゲーム本来のコンセプトでもあります。原案者として、こうした広がりはとてもうれしいですね。

 〈もともとのポケモンは携帯型ゲーム機用ロールプレーイングゲーム「ポケットモンスター 赤・緑」(8年発売)だ。11年に「金・銀」、22年に「ブラック・ホワイト」、28年に「サン・ムーン」など、シリーズ商品を次々に生み出し、累計売上数は世界で約2億2800万本に上る〉

 ポケモンシリーズは、特殊な能力を持つ生物(ポケモン)をパートナーにしたプレーヤーが、別のポケモンとの対戦を重ねながら冒険を続け、ポケモンリーグのチャンピオンを目指すというゲームです。冒険の途中で珍しいポケモンを集め、それを他のプレーヤーと交換できるのが最大の特色。生物を捕まえたり育てたり、友達と交換したり対戦したりするのは、今も昔も、子供たちを夢中にさせる要素ですよね。それがあるから、かつて子供だった大人たちも含め、長く親しまれているのです。

 〈異例のロングヒットを続けるポケモン。それを考案した原点はどこにあるのか〉

 原点となったのは、昆虫採集に夢中だった僕自身の小学生時代の体験。それをスタッフと話し合い、「自分も似たような経験をした」「私もした」という、一人一人の体験を投影して深みを増していったのがポケモンの世界観です。(聞き手 川瀬弘至)

                  ◇

 【プロフィル】田尻智(たじり・さとし)

 昭和40年、東京生まれ。東京工業高等専門学校在学中からミニコミ誌「ゲームフリーク」を編集・発行し、卒業後はゲームライターとして活躍。その一方、仲間とともにゲームソフトの自主制作に取り組み、平成元年にアクションゲーム「クインティ」を開発、ナムコから発売された。これを機に「ゲームフリーク」を会社組織とし、ゲーム事業を本格化。「ポケットモンスター 赤・緑」をはじめとするポケモンシリーズ、「ジェリーボーイ」「ヨッシーのたまご」「マリオとワリオ」「パルスマン」など多数のゲーム開発に関わった。