幼少期の日本の記憶、英国での体験交じった視点読み解く 『カズオ・イシグロの視線 記憶・想像・郷愁』

書評
『カズオ・イシグロの視線 記憶・想像・郷愁』荘中孝之、三村尚央、森川慎也編(作品社・2800円+税)

 昨年のノーベル文学賞を受けた長崎生まれの英国人作家、カズオ・イシグロ。幼少期の日本の記憶や英国での体験が複雑に入り交じった独特の小説世界を、気鋭の英文学研究者が多様な視点から読み解いている。

 ベストセラー『わたしを離さないで』から新作『忘れられた巨人』に引き継がれた「愛の力」。20世紀前半の上海を舞台にした『わたしたちが孤児だったころ』に投影されたイシグロの世界認識とは? 小津安二郎ら巨匠の映画から受け継いだ「日本的なもの」も浮き彫りにされ、世界の「深淵(しんえん)」を見すえる作家の魅力が伝わってくる。(荘中孝之、三村尚央、森川慎也編、作品社・2800円+税)