ガリレイも驚き? 木星の衛星、一挙に12個増えて79個に 命知らずの“逆走”も

びっくりサイエンス
木星の一部(左)とガリレイが発見した4つの衛星の合成画像。衛星は上からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト(NASA提供)

 地球は月という1個の衛星を従えている。太陽系の他の惑星では、水星と金星がゼロ、火星が2個などと衛星の数はさまざまだ。最も多い木星では最近、一挙に12個も発見されて計79個になり、天文学者の注目を集めている。中には他の衛星に衝突するリスクを抱えながら“逆走”している命知らずも見つかった。

巨大な引力で大家族に

 太陽系最大の惑星である木星は地球の約11倍の大きさがある。重さは318倍もあるため引力が大きく、小惑星や彗星(すいせい)などの小さな天体を引き寄せやすい。このため多くの衛星を持つ素地があり、これまでに67個もの衛星が見つかっていた。

 このうち4つは1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが発見したもので、直径3千~5千キロと特に大きく双眼鏡でも確認できる。うち太陽系最大の衛星「ガニメデ」は水星より大きい。内部に海を持つ可能性が指摘されており、欧州が2022年に探査機を打ち上げ、詳しく調べる。日本も観測機器の開発などで協力する見込みだ。

 残りの衛星は大半が岩石片で、大きさは最大でも200キロほどと小ぶりだ。

第9惑星探しの最中に偶然発見

 新たに12個の衛星が見つかったのは昨年春。太陽系のはるかかなたに未知の「第9惑星」を探していた米カーネギー研究所のチームが偶然、発見した。

 「惑星探しで望遠鏡を向けていた空の方角に、たまたま木星があった。そこでこの際、木星の未知の衛星も探してみようかと思いついた」

 チームリーダーのスコット・シェパード氏は7月の発表資料で、こう振り返った。

 12個は大きさが1~3キロと、かなり小さい。米ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡も、発見の確定に貢献したという。国際天文学連合が1年がかりでそれぞれの軌道を特定した。

 このうち9個は木星から離れた場所を、木星の自転と逆向きに約2年周期で回っている。その軌道などから、元々は3つの衛星だったが、それぞれ別の天体と衝突して砕けて数が増えたようだ。残る3個のうち2個は、木星に近い場所で木星の自転と同じ向きに1年弱の周期で回っている。

「全くの変わり者」、最後の生き残りか

 チームを驚かせたのが残る1つだ。他の衛星とは軌道が大きく異なっており、シェパード氏は「全くの変わり者」と表現。木星から離れた所にあり、他の衛星の軌道を横切りながら周回している。

 この衛星にはローマ神話の神ジュピターのひ孫娘で、健康と衛生の女神の名にちなんで「バーリトゥード」という命名が提案されている。

 バーリトゥードは木星の自転と同じ向きに回っているが、周辺に逆向きに回る衛星が多数あり、それらからみると逆行している。衛星同士が衝突するリスクはかなり高いはずだ。

 「衝突すればたちまち、互いに木っ端みじんになるだろう」とシェパード氏。木星の周囲では過去にこうした衝突が繰り返され、衛星が増えたらしい。バーリトゥードは、変わり者の最後の生き残りの可能性があるという。大きさは1キロ未満で、知られている木星の衛星の中で最小のようだ。

 小さな衛星たちが持つ多彩な軌道を調べることで、太陽系が形作られた46億年前の状況について、新しい知見が得られるとチームは期待している。

 木星では未発見の衛星がまだ存在する可能性がある上、衝突が起きれば数はさらに増える。そんな木星界隈(かいわい)の実態に、ガリレイも驚いているに違いない。(科学部 草下健夫)