【話の肖像画】歌手・俳優・ピーター(5) 芸能生活50年…休養後、次に - 産経ニュース

【話の肖像画】歌手・俳優・ピーター(5) 芸能生活50年…休養後、次に

ピーターさん(佐藤徳昭撮影)
 〈本名の池畑慎之介で、俳優としてさまざまな舞台や映像作品に出演してきた〉
 印象に残る舞台は、やはり平成15年初演の「越路吹雪物語」です。大好きだった歌手、越路さんを演じられて感無量でした。ピーターだけでなく、池畑の名前をどうにか浸透させたくて、新派も新劇も全部やったし、座長公演も翻訳劇も経験しました。そして、16年には池畑の名で舞台芸能の関係者に贈られる松尾芸能賞優秀賞をいただけました。
 実は昭和63年に父(地唄舞の吉村流四世家元で人間国宝、吉村雄輝(ゆうき)さん)もこの賞をいただいていて、親子2代での受賞が、私にはとてもうれしかったのです。
 〈師匠として自分に厳しく接していた父への思いは今も複雑だ〉
 一度離婚した父母が、私の家出をきっかけに再婚したというのは、なんだか不思議な縁ですよね。
 芸事の世界で、父子で同じ道に進むと、ずっと父親と比べられる。父は、親である前に芸人なので、子供が成長して自分を超えていく危機感があるだろうし、子供は、うまくできても「お父さんにそっくり」と言われるので、いつまでも自分を認められていないように不満に思う。だから私は、跡を継ぐより、自分で築いた道を歩こうと思いました。
 それでも父親の血ですね。私は舞台が好きです。父親はテレビ局のスタジオで舞の仕事をしたとき、「“機械”の前で舞うの、何か分からへん」と言っていました。芸を通して、お客さんの中に生まれる熱い高揚感を生で感じたい人だったのでしょう。
 私もそうです。幕が下りて、お客さんからバーッと拍手を送られて、もう一度幕が上がってカーテンコールをして、その真ん中にいられるときの高揚感…。これはね、「次は何をやろう」ってすぐ思いますよ。
 いくら稽古場で「もうこんな大変なこと嫌」って思っても、千秋楽を迎えると、次の舞台を考え始めてしまう。やっぱり私たちは親子なんだなって実感しますね。
 〈芸能生活50周年を迎えた。今、これまでは時間がなくてできなかった「やりたいこと」のリストを作成中で、来年1年間は休養し、そのリストの消化に励む予定だ〉
 やりたいことは、思いついたときにノートに書き留めてきました。100個くらいある。ヨーロッパをレンタカーで1周するとか、ハワイに住んで語学学校に通うとか。一時期、ニューヨークにいたので、多少は英語を話せますが、ちゃんとした文法で話をしたいんです。
 正直に言うと、休養が明けて、お仕事がなくなっても、それはそれで仕方がないと思っています。俳優としての仕事がなければ、料理も好きなので飲食店を開くのもいい。キッチンから海が見える家でレストランをして、そこに住むのが理想です。
 健康に年を取っていきたいです。私がデビューした頃のテレビはモノクロでしたけど、今や(高精細の)4K、8K放送の時代ですよ。50年間でこんなに世の中が変わったんです。これから先、もっともっと変わっていくでしょう。その様子を遠くからでいいから、見ていたいと思うのです。(聞き手 三宅令)=次回はゲームクリエーターの田尻智さん