海に処理水、漁協反発 初公聴会、賛成意見も

福島第1原発事故
東京電力福島第1原発の処理水をめぐり開かれた公聴会=30日午前、福島県富岡町の町文化交流センター学びの森(鵜野光博撮影)

 東京電力福島第1原発で汚染水を浄化して放射性物質トリチウムが残った処理水の処分をめぐり、国の有識者会議は30日、国民の声を聴く公聴会を福島県富岡町で初めて開いた。公募された14人が意見を述べたが、海洋放出に反対する声が大半を占め、福島県漁業協同組合連合会の野崎哲(てつ)会長は「国民の理解を得られていない現状では、県漁業に壊滅的打撃を与えることは必至で、強く反対する」と表明した。

 処理水は第1原発構内に約92万トン、タンク約680基分が貯蔵されており、日々増加。多核種除去設備(ALPS)で浄化する前に一時保管している汚染水も含めると総量は約110万トン、タンクは千基近くになる。政府、東電は「設置場所の限界が近づいている」と強調する。

 トリチウムは他の原発や事故前の第1原発では希釈して海に放出している。しかし、事故後は風評被害の懸念があるため、有識者会議は6年にわたって処理方法を検討。海洋放出以外に地層注入▽水蒸気放出▽水素放出▽地下埋設-を候補に絞り込み、このうち費用などの面で海洋放出が最有力とされている。

 公聴会では事務局の資源エネルギー庁が検討経緯を説明した後、意見表明者が発言。漁業を営む小野春雄さんは「試験操業の実績を積み上げてきたのに、トリチウムの放出により、なし崩しにされることに恐れを感じている」と訴えた。

 一方、大阪大で招聘(しょうへい)教員を務める大槻宗司さんは「影響が出ないレベルにしっかり管理された状態で、海洋放出されるべきだ」と述べ、風評被害を抑えるために、処理水の放射線濃度をサンプルではなく全量測定することを提案した。

 発言者からは、現状のタンクの中の処理水にトリチウム以外の放射性物質が含まれているとする報道があったことから、「公聴会の前提が崩れた」との指摘も複数あった。これについて委員長の山本一良(いちろう)名古屋学芸大副学長は公聴会終了後、報道陣に「個人的な意見だが、何らかの処理を複数回重ねるべきなのは当然だ」と述べ、処分に当たり再度浄化するなどの対応が必要との認識を示した。

 公聴会は31日にも同県郡山市と都内で開催される。

【用語解説】トリチウム水

 東京電力福島第1原発では原子炉建屋内に地下水が流れ込むほか、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷却するため注水を続けており、デブリなどに触れた水が汚染水となって増え続けている。東電は多核種除去設備(ALPS)で汚染水を浄化しているが、放射性物質トリチウムは除去できない。トリチウムは放射線のエネルギーが弱く、人体への影響は小さいとされ、通常の原発ではトリチウムを含んだ水を希釈した上で海に放出している。