【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(559) 気がつけば巻き込まれて… - 産経ニュース

【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(559) 気がつけば巻き込まれて…

 台風後の酷暑の中で、那須での人形劇の初公演の日も過ぎていった。
 これまでは、3人ほどで街頭用舞台でやっていたけれど、今回は歌も踊りもせりふもある35分の音楽人形劇「赤ずきんと狼のお話」。
 それを那須のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)チームと、東京の応援チームが合同で廃校小学校の音楽室でお披露目したのだ。
 でも、チラシを1千枚もまいたのに、お客さんは少なかった。特にガックリきたのは、子供がゼロだったこと。そもそも、子供が地域に少ない。学校行事とか高校野球決勝戦のテレビ中継とかも重なったらしい。
 が、2日間の公演で五十数人の大人が見に来てくれたのだから、大成功かなあという気もする。
 それにシニア人形劇団のある「サ高住」って、なんかいいじゃない? と、記念撮影した参加者の写真を眺めては、ひとり悦にいっている。
 写真には、カーニバル風のとりどりの衣装をつけた14人がはじける笑顔で写っている。
 そのうちの9人が那須チーム。
 出演者以外にも、いろいろ支援してくれる方もいて、これで那須に人形劇団が立ち上がったのかも、という思いがする。
 でも、参加した面々に言わせると、「チラシをまくのを手伝って」と頼まれて手伝ったら、「踊る人がいないの、衣装を着て踊って」、さらに「猟師のせりふを言う人がいない!」とか「音楽に合わせて、花を踊らせる人もいない」と言われ…。いつのまにか巻き込まれてしまっていた、とか。
 特に男性たちには、「フランスにはね、人形劇おじさんと呼ばれるシニアがいて、これがみんなすてきなのよ~」と言い続けたことが功を奏したのかもしれない。
 ともあれ、サ高住というところには、いろんな才能を持った人たちが集まっている。社会のカテゴリーごとに暮らしていた人たちが、ガラガラポンされて、これまで出会ったことのない人たちと出会ってしまった場所というか。
 今回も「人形劇でチェロひいていい?」とか「私、歌が上手です」とか、「営業はプロです」とか「小学校の教師でした」とか…。
 まさに人形劇団の立ち上げにぴったりなのだ。
 振り返れば私も同じ。気が付けば何かに巻き込まれてしまっていたというように、自分の人生を形成してきたように思える。
 シニアになると、お客はいなくても楽しければそれでいいわ、と思えるのがいいなあと思う。(ノンフィクション作家・久田恵)