長野の県宝に縄文土器158点 県審議会、包括指定を答申

 
岡谷市の榎垣外遺跡から出土した「顔面把手付深鉢形土器」(長野県教育委員会提供)

 長野県文化財保護審議会は29日、総数158点に及ぶ「信州の特色ある縄文土器」など3件を県宝に指定するよう、県教育委員会に答申した。9月中旬に開催される県教委定例会で正式決定される見込み。土器をめぐってはこれまで、1点ずつや遺跡ごとの指定が行われてきた。だが今回は初めて、市町村の枠を超え、広範囲にわたる複数の遺跡から出土した土器が、包括的に指定された。県教委は、縄文土器の芸術性が最近、注目されていると指摘した上で、「縄文時代の文化に対する県民の関心を高めたい」としている。(太田浩信)

 答申されたのは、茅野市や塩尻市、御代田町など18市町村から出土したいずれも縄文時代の土器。県内には、1万5000~1万3000年前に始まったとされる縄文時代の中でも、とりわけ中期(約5000~3000年前)の遺跡が数多く確認されており、装飾性に富み、芸術性が評価される土器が出土している。

 国特別史跡の「尖石(とがりいし)石器時代遺跡」(茅野市)に代表されるように、八ケ岳周辺には、縄文時代の遺跡が集中している。良質な黒曜石が産出され、日本列島の各地に運ばれるなどして、東西の交流拠点となっていたことから、今年5月には、茅野市を中心とした地域一帯が「星降る中部高地の縄文世界-数千年を遡(さかのぼ)る黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅-」の表題で、日本遺産に選ばれた。

 県宝への指定を答申された158点の土器には、ひも状の粘土による波状や円形の模様が付けられたり、人の顔とか動物をかたどった装飾が施されたりしており、華やか印象を与える土器が多い。活発な人の交流が、全国的に珍しい装飾表現を生んだとみられる。

 答申された土器のうち、榎垣外(えのきがいと)遺跡(岡谷市)から出土した「顔面把手付(とってつき)深鉢形土器」は、人の顔をデザインしたとみられる取っ手がユーモラスで創造性を感じさせる。穴場遺跡(諏訪市)の「動物装飾付釣手(つりて)土器」は、丸みを帯びた外観に大きな丸い穴が開けられ、ランプとして使われた可能性が推測される。蛇のような装飾もあり、デザイン性にも優れている。

 県教委は「信州が育んだ特徴的な土器の数々を包括的に県宝に指定したい。観光資源としても活用したい」と期待する。

 同審議会はこのほか、明治~昭和初期に製糸業で栄えた「旧小田切家住宅」(須坂市)と、江戸時代の関所に関する古文書が残る「千葉家文書(もんじょ)」も県宝に指定するよう答申。長野市立博物館が所蔵する「小正月関係資料コレクション」と、江戸時代後期の石積み堤防「座光寺の石川除(いしかわよけ)」(飯田市)についてはそれぞれ、県有形文化財と県史跡に指定すべきだとした。