葉室麟さんお別れの会 貫いた社会的強者に対する反骨精神 - 産経ニュース

葉室麟さんお別れの会 貫いた社会的強者に対する反骨精神

優しくほほえむ葉室麟さんの遺影の前で、多くの出版関係者が手を合わせ、献花をした =東京都千代田区
 昨年12月に66歳で亡くなった直木賞作家、葉室麟(はむろ・りん)さんのお別れの会が17日に東京都内であり、親交のあった作家や出版関係者ら約200人が故人をしのんだ。
 現在の北九州市に生まれた葉室さんは、地方紙記者などを経て50代で作家デビュー。人間の尊厳を見つめた重厚な歴史・時代小説を書き続け、切腹を命じられた武士の覚悟を描く『蜩(ひぐらし)ノ記』で平成24年に直木賞を受けた。会場には、12年という短い作家生活で積み上げた60冊に上る小説の単行本がずらりと並んだ。
 集まった作家仲間は、故人の強い反骨精神と柔らかな笑顔が伝わってくるような挿話を次々と披露した。
 「作品の主人公と葉室さんは近い。ぶざまで誰にも理解されなくても、正しいことは美しい、それがきっと誰かを救う-という信念で書いていたと思う」。福岡市の西南学院大の同窓でもある東山彰良(あきら)さん(49)はそう語り、「肉体はここにはないけれど本を開くと葉室さんの気配を感じ、行間で対話ができる感じがする」と続けた。
 安部龍太郎さん(63)は「えっらそーに!」という葉室さんの口癖を懐かしみながら、「社会的強者に対し不良少年のような反骨精神を持っていた。偉そうでない生き方を追い求めたところに、その文学の神髄はあった」と話した。
 歴史について熱っぽく語る生前の葉室さんを「いい横顔やな」と思いながら見つめていた、というのは朝井まかてさん(59)。「挫折や後悔を消去してしまわず、自分の足の下で耕していった。そしていろんなことを思考し続けた、そういう横顔でした」と涙交じりに話し、「今日集まったのはお別れを言いがたい人たちばかり。だから何度も集まり、飲んでは葉室さんと語り続けてます。そのうちみんなそっち行くので、ひとまず『さようなら』」と遺影に呼びかけた。(海老沢類)