【話の肖像画】歌手・俳優 ピーター(1)「ピーター」を脱ぎます 死ぬときは本名で - 産経ニュース

【話の肖像画】歌手・俳優 ピーター(1)「ピーター」を脱ぎます 死ぬときは本名で

歌手・俳優のピーターさん(佐藤徳昭撮影)
 〈今年5月、デビュー以来名乗ってきた「ピーター」という芸名からの卒業と1年間の休養を宣言し、世間を驚かせた〉
 今年、芸能生活50周年を迎えたんですが、本当に忙しいまま、ここまで来ました。もう休みたいな、というか、このまま朽ち果ててしまうんじゃないかという危機感があったんです。
 テレビやラジオでレギュラー番組を何本も抱えている中、「この年齢でしかできないことを悔いなきよう、残りの人生を歩みたい」と休養宣言をしたので、反響は大きかったです。発表後、ベテランの歌手の方などから「みんな休みたいけれど、怖くて休めないんだ」といった声を聞きました。
 でも私、これで仕事がダメになってもかまわないという気持ちなんです。今、66歳ですが、「人生で一番楽しかったのは67歳のときだった」なんてことになったらすてきじゃないですか? 楽しいのは若いときだけ、なんて悲し過ぎる。人生の最期の瞬間、「面白かったな」と目をつぶりたいんです。
 〈昭和44年公開の映画「薔薇(ばら)の葬列」(松本俊夫監督)にゲイの青年、エディ役で主演し、デビュー。その際、ピーターの芸名を名乗った〉
 その頃働いていたゴーゴーバーで、「あの子は男の子なの? 女の子なの? ピーターパンみたいね」とよく呼ばれていたので、そのまま芸名になったのです。そのときはまさか、その後ずっと芸能界で生きるなんて、思ってもみませんでした。
 最近は、お友達をお見送りする機会も増えました。私が死ぬときは「ピーター」ではなくて、本名の「池畑慎之介」で死にたい。アナウンサーに「ピーター、本名・池畑慎之介さんが亡くなりました」ではなくて、「ピーターとしても知られた池畑慎之介さんが亡くなりました」と訃報を読んでもらいたいと思ったんです。
 これまで、歌手やタレント活動の際には「ピーター」、俳優業では「池畑慎之介」、舞踊家としては「吉村雄秀(ゆうひで)」といろいろな名前を使い分けてきましたが、今後は本名だけで活動したいと思います。
 決断した背景には、平成23年の東日本大震災もありました。恐ろしい津波の後でも、被災者の方はたくましく生きていらっしゃる。「大切なのは物ではない」と痛感し、身軽に生きようと思ったんです。あれ以来、家や家具、洋服の断捨離を進めてきました。そして、いくつもの名も断捨離しようと決意したんです。
 31日には、ピーターとして東京では最後のディナーショーを品川プリンスホテル(東京都港区)で開きます。50年間も一緒に過ごしてきた、私にとって大事なピーターという名前とは、これでお別れ。「ありがとう…そして、さよならピーター」という気持ちで、ステージに立つつもりです。(聞き手 三宅令)
                   ◇
【プロフィル】ピーター
 昭和27年8月8日、大阪市生まれ。本名は池畑慎之介。父は地唄舞吉村流四世家元で、人間国宝にもなった吉村雄輝。44年に映画「薔薇の葬列」で、ピーターを名乗って芸能界デビュー。歌手としても活躍し、デビュー曲「夜と朝のあいだに」は一世を風靡(ふうび)した。60年に黒澤明監督の映画「乱」に出演。その後、俳優としては本名の「池畑慎之介」、歌手・タレントとしては「ピーター」の名を使い分け、演劇からバラエティー番組まで多彩な活動をしている。芸能生活50周年を迎え、来年は芸能活動を休止すると宣言した。