「夏休み明け自殺」防げ 保護者にできることは…子供の気持ち受け止めて - 産経ニュース

「夏休み明け自殺」防げ 保護者にできることは…子供の気持ち受け止めて

「学校に行かないことも選択肢のひとつ」と話す富山雅美さん
 夏休み明け前後に急増する子供の自殺。いじめや友人関係に悩む子供は、新学期が近づくと追い詰められてしまうケースもある。最悪の事態を防ぐために、保護者にできることは何だろうか。(油原聡子)
死ななくてよかった
 「校舎から飛び降りて死んじゃおうかな」-。
 東京都調布市の富山雅美さん(29)は中学1年の1学期の期末テスト最終日に、自殺を考えた。入学直後からいじめが始まり、教師に相談しても解決せず、人間不信に。踏みとどまったのは「お母さんの悲しむ顔を見たくない」と思ったからだという。
 1学期が終わると、「もう学校に行かない」と家族に宣言。母親は「そんなにつらいなら行かなくてもよい」と言ってくれた。「どんなときも母が寄り添ってくれたことで救われました」。その後はフリースクールに通い、大学も卒業。現在はスクールソーシャルワーカーとして働く。
 「あのとき死ななくて本当によかった。私は今、幸せだし楽しい。一番大切なのは生きること。理解してくれる人はいるから、大人を頼ってほしい」
不登校は命の問題
 内閣府によると、平成25年までの42年間に自殺した18歳以下の子供1万8048人を分析したところ、自殺日は9月1日が131人と突出して多いことが判明。4月11日が99人、4月8日が95人、9月2日が94人、8月31日が92人など、長期休暇明け前後に増えることが分かっている。
 また、自殺総合対策推進センターによると、18~27年の10年間では小中高校生の自殺のピークは8月下旬だった。同センターの担当者は「夏休みの短縮化が関係しているのでは」と指摘。夏休み中からの対策強化が重要だとしている。
 子供の自殺問題は深刻で厚生労働省によると、29年の自殺者は全体で2万1321人と8年連続で減少していたが、小学校から高校までの自殺者は、前年より37人多い357人だった。
偏見払拭が必要
 保護者にできることは何だろうか。不登校の当事者らの支援活動を行う、NPO法人「フリースペースたまりば」の西野博之理事長(58)は「不登校は命の問題。学校に行かないと将来がなくなってしまうと思うほど、子供にとってはつらいこと」と訴える。子供が「学校に行きたくない」と口にしたら、寄り添う姿勢を見せることが大切だ。「理由をうまく話せない子供も多い。まずは気持ちを受け止めて」と西野さん。
 体に不調が出ることもある。腹痛や頭痛を訴えるなど、普段と違う様子がないか、注意して見守る。
 文部科学省は28年の通知で「不登校の児童生徒が悪い」という偏見を払拭する必要があることなどを指摘している。西野さんは「子供にとって家庭が安心できる場所になってほしい。信頼できる人がいることが、再び社会に出るための力になる」と話している。
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 NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」は子供たちに向けて、ホームページ上に相談先や「居場所」を掲載。さまざまな団体のメッセージ動画を公開している。また、「日本いのちの電話連盟」はチャットでの相談に応じる。27日から9月2日の午後4~10時。
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 ■著名人が語りかける「学校に行きたくない君へ」
 女優の樹木希林さんら著名人20人が不登校について語る「学校に行きたくない君へ」(ポプラ社、全国不登校新聞社編)が出版された。
 同書は、不登校や引きこもりの専門紙「不登校新聞」に掲載されたインタビューや講演内容をまとめたもの。「生き続けなきゃ、もったいないじゃない」(樹木さん)、「いやなことをしてきたり、からかってきたりした人のことは許さなくていい」(作家の辻村深月さん)など、新しくスタートを切るためのヒントが紹介されている。