【太陽光発電は人を幸せにするか】(2)土台がドラム缶の太陽光発電所 ぬりかべのように迫るパネル… 「地球にやさしいまち」はいま - 産経ニュース

【太陽光発電は人を幸せにするか】(2)土台がドラム缶の太陽光発電所 ぬりかべのように迫るパネル… 「地球にやさしいまち」はいま

基礎にドラム缶を使った太陽光発電所。斜面の下には住宅が見える=6月、山梨県北杜市長坂町長坂上条(三枝玄太郎撮影)
基礎にドラム缶を使っている太陽光発電所。下の住宅側から撮影した=6月、山梨県北杜市長坂町長坂上条(三枝玄太郎撮影)
渡辺英子・北杜市長が所有する「渡辺第二発電所」=平成29年9月、山梨県北杜市長坂町長坂上条(三枝玄太郎撮影)
架台にドラム缶を使った珍しい太陽光発電所=6月、山梨県北杜市長坂町塚川(三枝玄太郎撮影)
基礎部分にドラム缶を使った太陽光発電所=6月、山梨県北杜市長坂町塚川(三枝玄太郎撮影)
「残土受け入れます」と書かれた看板のそばに建設された太陽光発電所。残土を整地するブルドーザーが日中は忙しそうに作業していた=7月11日、山梨県北杜市高根町上黒沢(三枝玄太郎撮影)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「全国新エネ100選」に選ばれた太陽光発電の実証施設。山梨県北杜市の「北杜サイトメガソーラー~北杜市太陽エネルギープロジェクト」の一環で建設された。推進役だった白倉政司・前北杜市長の揮毫もある=7月11日、山梨県北杜市長坂町夏秋(三枝玄太郎撮影)
太陽光発電所の出入口に設置された看板。「残土受け入れます」との看板通り、残土を整地した上に太陽光パネルを並べているようだ。太陽光発電所の事業者はわからない=6月、山梨県北杜市高根町上黒沢(三枝玄太郎撮影)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「全国新エネ100選」に選ばれた太陽光発電の実証施設。山梨県北杜市の「北杜サイトメガソーラー~北杜市太陽エネルギープロジェクト」の一環で建設された=7月11日、山梨県北杜市長坂町夏秋(三枝玄太郎撮影)
 「人と地球にやさしいまちづくり」-。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「全国新エネ100選」に山梨県北杜市の「北杜サイトメガソーラー~北杜市太陽エネルギープロジェクト」が選ばれている。
 NEDOのホームページ(HP)には、新エネ100選を「全国の新エネルギー等利用の取り組みを評価し、経済産業省とNEDO技術開発機構が47都道府県からもれなく先進的、先導的な事例を選定したものです」とある。
 平成21年秋に選定された自治体にはNEDOから認定証が授与された。北杜市は全国有数の日射量を利用し、「太陽光発電」の華々しい先進地に躍り出たのだ。
 北杜市が注目されたのには理由がある。
 太陽光発電は熱源が太陽光だから、当然、日射量は多い方が良い。一方で太陽電池の中には、高温に弱く、熱交換比率が下がってしまうものがある。だが北杜市は日射量に比して夏は冷涼だ。ここと同じ程度の日射量を持つところは長野県や沖縄県の一部しかない。東京に近い地の利もある。これほどの好立地はない。「続々と東京辺りの業者が北杜市を目指したんです」と「北杜市太陽光発電を考える市民ネットワーク」共同代表の帆足興次さんは説明する。
 ところが、そんな「町おこし」で太陽光発電所を誘致した結果、「そこかしこに太陽光パネルがキラキラ光っている」(帆足さん)ようになってしまった。
 帆足さんら、北杜市太陽光発電を考える市民ネットワークが、資源エネルギー庁の資料を元に作成したデータによると、北杜市では平成26年4月に300件程度だった太陽光発電所が29年9月には1567件まで増えた(10キロワット以下の屋根設置型は除く)。さらに今後設置予定のものが、1250件程度ある。
 同じグループの共同代表である中哲夫さん(68)らの案内などで複数回、北杜市を車で走ってみた。
 まず、前回、紹介した北杜市高根町上黒沢の県道沿いの「ぬりかべ」。東京都目黒区のパチンコチェーンの子会社「トリックスターズ・アレア」が所有する太陽光発電所だ。以前はパネルの斜度がもっと急だった。「他社が施工したものを買ったが、パネルの傾斜がきつく、太陽光を受ける効率が悪かったことと景観上の問題から、市に指導を受けて作り直した」(トリック社の担当者)という。
 ここを小淵沢町方向に抜けると、「ぬりかべ」に隣接したところに「残土引き受けます」の看板が見える。残土を買い取り、その残土を積み、整地する。その跡地にソーラーパネルを敷こうということのようだ。トリックスターズ社とはパネルの色が違うので、別の会社のようだ。ただ、社名を記した看板がないため、どこの会社のものかは分からない。取材に訪れた日は、残土を整地するブルドーザーが夕方までせわしなく作業していた。
 「ドラム缶で土台を作った太陽光発電所もあるんですよ。いくら何でも景観だけでなく、構造上、問題があるんじゃないかと…」と中さんは言う。
 北杜市長坂町長坂上条。ドラム缶を架台にした太陽光発電施設が傾斜約15度の斜面に建設されている。地元の建設会社が立てた。
 近隣の80歳代の主婦は「近所づきあいがあって、顔を合わせるもんでね。今のところは大丈夫だよ」とためらいつつ答えた。
 この土地はもとはモモやブドウ畑だったらしい。だが、ここで耕作をしていた地権者に農業を継ぐ人がなく、老夫婦がたまに畑仕事をするだけになっていたのだという。景観上の問題よりも土砂崩れなどの不慮の災害が心配だ。
 「ドラム缶は空洞ではなく、コンクリートを充満させている。単管パイプより強度があると考えている。近隣や周辺の環境に配慮してやっていきたい」と取材に、施工した会社の社長は答えた。
 中さんは言う。「実はこの近くの住民が私たち主催の集会に来られて、お話をお聞きしたことがあります。その際、太陽光発電を建設する際の規制を強化する署名をお願いしたのですが、『名前が表に出るのは…』と躊躇(ちゅうちょ)されました。近隣のつきあいもありますし、声を上げることは難しいようです」
 再度この現場を訪れると、60歳代の近隣の女性が取材に応じてくれた。
 「地権者はここの家です(と指さした)。ところが、親戚同士で太陽光施設をめぐって賛成、反対が分かれて険悪になってしまったそうです。傾斜が急ですから。声に出さなくても心配する人は多いんですよ」
 太陽光発電施設が人間関係にも影を落とした一例である。(WEB編集チーム 三枝玄太郎)