富士そば会長・丹道夫(1)40年前からアルバイトにもボーナス

話の肖像画
富士そば会長・丹道夫氏(宮川浩和撮影)

 〈「名代(なだい)富士そば」は、首都圏を中心に約130店を展開する、立ち食いそばのチェーン店。早くから24時間営業をするなど、世間のニーズをつかんだ経営で知られるが、一方でアルバイトにボーナスや退職金を支給するなど、働く人に優しい“ホワイト企業”としても注目されている〉

 金額はそう多くはないのですが、アルバイトへのボーナスや退職金の支給は40年前からやっていることです。有給休暇もあります。今ごろになっていろいろな人にびっくりされるのですが、どこの外食チェーンもそうしているものと思っていました。企業にとって人材は一番大事な財産です。この財産を大切にするのは正しい経営判断なのです。最近は留学生のアルバイトも働いてくれています。留学生にも退職金を出すと、「お金欲しさにすぐ辞めてしまうのでは」という心配もあったのですが、そんなことはありません。働いていて楽しいそうなんですよ。

 〈売り上げの良かった店に対し、報奨金を出している〉

 年間の売り上げが前の年を上回ったら、もちろんアルバイトも含めた全員に渡します。達成率が高くなるほど、金額も増える仕組みです。全社で年間1千万円以上のさまざまな報奨金を出しています。

 報奨金の制度を始めたら、思わぬ効果がありました。それは、従業員が売り上げなどの数字に興味を持つようになったことです。報奨金が欲しいので、店内をよりきれいにするとか。

 また、社員をねぎらうために全員に旅行もプレゼントしています。これは残念ながらアルバイトは対象ではありません。さすがにアルバイトまで旅行に参加したら、仕事が回らなくなってしまいますから。予算は約20万円で、3日くらいで帰ってこられる所ならどこに行ってもいいというルールです。以前、「ハワイに行きたい」という声がありました。ハワイは遠いので、3日では楽しめないのでは、と思いましたが、何も言いませんでした。そうしたら、本当に行ってリフレッシュしてきたとか。以前にも増して働いてくれるようになりました。

 〈細かいマニュアルがなくても各店の仕事は回っている〉

 何時に出勤して何時に帰る、という程度のものはあるんですよ。でも、そばの湯切りは何回だとか、お客さんを見たら微笑むだとか、そういうのはないんです。そのときのムードにもよるし、従業員の体調だっていつも良いとは限りません。

 就労時間についても臨機応変です。例えば従業員が子供の迎えに行くので1時間早く帰りたいという場合は、一緒に働いている人同士の話し合いで代わってくれる人がいれば帰っていい。そのために書類を書いたりする必要はありません。いつも私が言っているのは、「細かいことはいいから、うまくやってくれ」ですから。(聞き手 櫛田寿宏)

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 【プロフィル】丹道夫(たん・みちお)

 昭和10年、名古屋市生まれ、愛媛県大保木村(現西条市)で育つ。東京栄養食糧専門学校卒業。一大そばチェーン「名代富士そば」を運営するダイタンホールディングスの創業者で会長。4度にわたり上京と挫折を繰り返し、埼玉県で弁当屋を起業。そこで得た資金をもとに昭和39年、友人と不動産会社を興す。41年に立ち食いそば屋チェーンを立ち上げ、47年にダイタンフード(現ダイタンホールディングス)を設立した。「丹まさと」のペンネームで作詞を手掛け、多くの演歌歌手に提供している。