「“高み”を目指す」将棋の高見泰地叡王 笑顔づくしの就位式 

 
就位式に出席した高見泰地叡王(田中夕介撮影)

 タイトル戦に昇格した将棋の第3期叡王(えいおう)戦決勝七番勝負を制した高見泰地(たかみ・たいち)叡王(24)の叡王就位式・祝賀パーティーが7月13日夜、東京都千代田区のホテルニューオータニで開かれ、女性ファンら約200人が参加した。高見叡王が巧みな話術で謝辞を述べれば、師匠の石田和雄九段(71)は一門初のタイトルホルダーに喜びを爆発させ、“一人漫才”。会場は爆笑の渦に巻き込まれた。

幻のマンション贈呈

 午後6時、就位式はおごそかな雰囲気で始まった。叡王戦を主催するIT企業、ドワンゴの取締役、山中伸一氏に続き、日本将棋連盟の佐藤康光(やすみつ)会長(48)が主催者挨拶を行った。

 佐藤会長は「高見泰地叡王、おめでとうございます。予選、本戦を勝ち抜いて決勝七番勝負に進んだのは高見泰地六段と金井恒太(かない・こうた)六段。非常にフレッシュな若手の激突になりました。新しいタイトル戦ということで若手が出てくることを願っていました。といいながら、私も本戦に残っていたわけですが」と語り、会場は爆笑に包まれた。

 その後、協賛社から記念品が贈呈された。この中で、司会者が「(マンション販売の)タカラレーベンからはマンションを」と言った瞬間、高見叡王は顔を上げ、会場もどよめいたが、「…というわけにはいきませんので、ホテルの宿泊券を」と続き、高見叡王の顔にも残念そうな笑みが浮かんだ。

意外な来賓に「キャー」

 俳優の永山絢斗さん(29)が、来賓として祝辞を述べた。式次第に名前が記されていなかったこともあり、登壇すると女性客の間から「キャー」と悲鳴にも似た歓声が上がった。

 永山さんは、将棋棋士・瀬川晶司(せがわ・しょうじ)五段の自伝的ノンフィクション小説「泣き虫しょったんの奇跡」の映画(9月公開予定)に出演。高見叡王も指導という形で製作にかかわった。

 「映画の舞台挨拶より緊張します」と切り出した永山さんは「高見さんは『タイトルを獲ってやる』と言っていたんですが、本当に感動しました。棒銀(戦法)くらいしか知らなかったんですが、いろいろ教えてもらって将棋のとりこになり、毎日、将棋をやっています。駒もつばき油で磨いてます」と話した。

自分は持ってるな

 続いて、高見叡王が謝辞を述べた。

 高見叡王は「実は昨日(12日)、25歳になったんです。忘れられない誕生日になりました」と語った。その後、「18歳で棋士になった」「大学在学中にタイトルを獲りたかった」「叡王戦がタイトル戦に昇格し、自分は『持ってるな』と」「勝てると信じてやってきた」ことなどを巧みな話術で語り、協賛各社など関係者へのお礼を述べると、「今後とも“高み”を目指して頑張ります」と締めくくった。

師匠爆発

 乾杯の発声は、師匠の石田九段。「皆さま、もうのどが渇いちゃって、一杯やりたいなーってことなんで、挨拶は短めにいたします」と始めたものの、ここからが長かった。

 「高見君は、(自分のところに)来たのは小学校5年でしたかね。もう20年たちますか? 20年ってことはないわなー」…さらに続く。

 「何だかんだで長くなっちゃってごめんなさい。わが一門も、おかげさまで高見君のほかにも(棋士たちが)活躍しだしたんで、どんどん伸びていってもらいたいんだな。でも、これ、石田一門のパーティーじゃないから、すいません。それでは、乾…」。

 まだ、終わらなかった。

 「肝心なことを忘れていた。(叡王戦主催の)ドワンゴさん、どうもありがとうございます」と言うや、同社の山中取締役のもとに駆け寄って握手。「こんなありがたい人にお礼を言わないとね」。勢い余って山中取締役の隣に座っていた佐藤会長の肩を何度もたたき、「ごくろうさん」。佐藤会長は苦笑いだ。

 さらに山中取締役を「山中伸弥(しんや)さん」と呼んで「いや、伸一さん」と言い直すひと幕も。「伸弥」は、ノーベル賞受賞者の名前だ。「偉い人の名前は似ています」と巧妙な一手で逃げてから、ようやく「ということで、乾杯をさせていただきたいと思います」。

 この間、約4分。爆笑の乾杯で始まった祝賀パーティー。最後まで笑いは絶えなかった。(文化部 田中夕介)

 叡王戦 IT企業ドワンゴが主催する将棋のタイトル戦の一つ。平成27年度に一般棋戦として始まり、29年度(第3期)からタイトル戦に昇格。タイトル戦は挑戦者がタイトル保持者に挑む。叡王戦は七番勝負の勝者が、叡王のタイトル称号を得る。タイトル戦には他に竜王戦、名人戦、王位戦、王座戦、棋王戦、王将戦、棋聖戦がある。タイトルを争わない公式戦は、一般棋戦という。

 高見泰地 たかみ・たいち。横浜市出身。横浜市出身。七段。平成17年、小学6年生で奨励会(日本将棋連盟のプロ棋士養成機関)入会。同じくタイトル初挑戦の金井六段を相手に叡王戦決勝七番勝負を4連勝で制し、今年5月、初代(第3期)叡王に。