ネッシー伝説に終止符!? ネス湖の生態系をDNA解析、来年公表 「少年のロマン」は解明されるか

 
 かつて怪獣ネッシーと言われたこともある写真(AP=共同)

 幻の怪獣「ネッシー」が生息する伝説がある英北部スコットランドのネス湖で、湖水のサンプルを採取してDNAを解析し、生物種を特定する生態調査が進んでいる。国際研究チームの調査を主導するニュージーランド・オタゴ大学のニール・ジェメル教授(遺伝子科学)は6月、「ネッシーは少年のロマン。伝説を生物学的に説明する新発見があることは疑いようがない」と“20世紀最大ミステリー”解明に意欲を見せた。(インバネス 岡部伸)

 調査は湖沼で採取した水に含まれるDNAの分析により、水棲動物の生息状況を推定する環境DNA解析法で行われる。

 ジェメル氏によれば、生物が水中を移動すると、皮膚やうろこ、羽、毛、排せつ物などのDNAが残る。今回の調査では、「2週間かけて湖のさまざまな場所、水深から水サンプルを300個採取し、日本製の機材で有機物質をこしとり、DNAを抽出。これをヒトゲノムプロジェクトのために開発された遺伝子科学を駆使して動物や魚などのDNA塩基配列を見つける」(ジェメル氏)。

 そして、集めたDNA情報を既に収集されている恐竜を含む国際的データと比較することで、ネス湖にいかなる生物種が生息し、また過去に生息していたかを解析する-というわけだ。調査結果は2019年1月に公表される予定だ。

 調査には、ジェメル氏を中心に英国、デンマーク、米国、オーストラリア、フランス、スイスの7カ国の科学者が参加。このほかにも、米国や中国の企業から機器や機材の、ネス湖の地元からもボートや施設の提供を受けるなど、官民を問わずに多くの協力が得られたという。

 その幅広さにジェメル氏は、「世界の多くの人がネッシー伝説の解明を期待していることが分かった」と頬を緩める。

 実は、ジェメル氏自身は「ネッシーの存在を信じていない」という。

 ただ、10歳の息子と友人が、ネッシーの存在を証明する研究に熱い期待を寄せる姿を見て、「ネッシーは少年のロマン。それを最新科学で解明しよう」と調査を決断した。

 水温が低いネス湖で恐竜が生き延びた可能性は低い。しかしジュメル氏は、「かつてジュラ紀の爬虫類が生息していた可能性はある。爬虫類のDNA配列が発見されればサプライズだ」と意欲を語った。

 かつては大型のチョウザメやサメなどが「怪物」とされたこともあった。「他の生物の遺伝子コードが見つかれば、ネッシー伝説を生物学的に説明できる」と期待感も示し、「生存論争に終止符を打ちたい」と語った。

 ネス湖は英国最大の淡水湖だが、ジェメル氏は、「バクテリアや最近の外来種に関する重要データなどの新知識が得られる」と述べ、生態系の解明も進める考え。「2019年1月の発表を楽しみにして欲しい」と笑った。

伝説は1500年前から

 ネス湖に存在するとされるネッシー伝説は1500年前にさかのぼる。565年にアイルランドの宣教者、聖コルンバがネス川で怪物に遭遇したのが発端。1934年、外科医のロバート・ケネス・ウィルソンがネス湖で撮影に成功したとした写真は60年後に捏造(ねつぞう)だったことが発覚したものの、目撃情報が後を絶たず、観光の名所となっている。2003年には英BBC放送が資金提供し、ソナー600台と衛星追跡で科学調査が行われたが成果はなかった。