【話の肖像画】自民党副総裁・高村正彦(1) 憲法改正、実現可能な案を考える - 産経ニュース

【話の肖像画】自民党副総裁・高村正彦(1) 憲法改正、実現可能な案を考える

高村正彦氏(萩原悠久人撮影)
 〈昨年10月の衆院選に出馬せず、議員生活にピリオドを打った〉
 理由は体力の限界です。昨年8月にペルーを訪れ、9月にイランを安倍晋三首相の特使として訪問しましたが、両国で議員連盟や日系人の方たちとの予定をキャンセルせざるを得ませんでした。
 イランから帰国後、安倍首相に呼ばれ「次の臨時国会で衆院を解散したい」と告げられました。私が「次の選挙に出馬しない」と伝えると、首相は「憲法(改正)問題をやってもらわなければ困る」と言われました。「議員でなくても憲法のお手伝いはできます」と返しましたが、まさか自民党副総裁を続投することになるとは思いませんでした。衆院解散後、党本部の副総裁室を片付け始めており、私にとっては想定外のありがたい誤算でした。
 〈副総裁にとどまり、党の改憲条文案作りに挑んだ。最大の争点は、憲法9条の改正問題だ〉
 いざというとき自衛隊に命をかけてくれというのが政治家で、そう期待するのが国民ですが、「自衛隊は合憲」と断言する憲法学者は2割しかいない。
 新人議員だった37年前、憲法改正に関する新聞社の取材に「9条1項の平和主義を堅持しつつ、自衛隊の存在を明記すべきだ。機は熟さず」と答えました。37年間、機は熟してきませんでした。自民党は野党時代の平成24年(戦力不保持と交戦権を否定した)9条2項を削除し「国防軍」を明記する改憲草案をまとめましたが異論が強く、誰もその草案で国会の憲法審査会を動かそうとしませんでした。
 現状の打破に動いたのが安倍首相です。首相は昨年5月3日に、9条2項を維持して自衛隊を明記する案を提案しました。当時、公明党の北側一雄憲法調査会長に感想を聞くと「自衛隊明記の書き方次第ですね。フルスペック(際限ない形)で集団的自衛権が認められる書き方はダメだ」とクギを刺されました。自民党には、2項を削除し、世界の普通の軍隊のようにフルスペックな集団的自衛権を認めるべきだという声もあります。
 ただ公明党が「2項削除は論外」というのに自民党が押し通せば、現実に衆参で3分の2以上の賛成が必要な国会発議ができず、国民の意思を問うこともできません。実現可能な望ましい案は何か。これを考えるのが政治家の仕事です。国民の9割は今の自衛隊を理解し支持していても、普通の軍隊になることを欲している人はそんなに多くはありません。
 〈党憲法改正推進本部の特別顧問として党の改憲条文素案をまとめ、今年3月の党大会で発表した。しかし、野党は国会で議論することさえ拒む〉
 憲法改正発議は国会のみに与えられた権能です。「安倍内閣が気に入らないからやらない」では、与えられた権能を自ら放棄している。審議を最初からせずに国民の意思決定を邪魔するのは、憲法の建前にも反しています。(聞き手 水内茂幸)
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【プロフィル】高村正彦
 こうむら・まさひこ 昭和17年3月15日、山口県周南市生まれ。中央大法学部を卒業後、弁護士として13年間活動した後、55年6月の衆院選で旧山口2区から自民党公認で出馬し、初当選。それ以降、小選挙区となった山口1区も含め連続12回当選を果たした。平成6年の村山富市内閣で経済企画庁長官として初入閣。外相、法相、防衛相を歴任した。12年に自民党の番町政策研究所(旧河本派)の会長に就任し、15年には党総裁選にも出馬した。24年に第2次安倍晋三内閣が誕生した際、党副総裁に就任。29年10月の衆院選に出馬しなかったが、副総裁職は続投した。