【話の肖像画】スポーツキャスター・女優 大林素子(3)大河ドラマでギャフンと言わせたい - 産経ニュース

【話の肖像画】スポーツキャスター・女優 大林素子(3)大河ドラマでギャフンと言わせたい

「MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~」の公開げいこ=平成24年、東京・新国立劇場
 〈舞台「MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~」は、前の大戦で鹿児島・知覧の基地から飛び立った特攻隊員と食堂の女主人、トメさんとの交流を実際の遺書をもとに描いた物語だ。平成21年の初演から主演のトメさん役を務め、今年で10年目のロングラン。ライフワークというべき大事な作品となっている〉
 私は歴史大好きの“歴女(れきじょ)”。この舞台の脚本・演出を務める藤森一朗さんも歴史に詳しくて、一緒に取材をして現地に何度も行って「MOTHER」をつくったんです。今年で戦後、73年。戦争はどんどん風化が進み、特攻隊員の生き残りの方も少なくなっています。私たちにできることは何なのか。
 当たり前のように感じている今の平和な日本がホントはどれだけありがたいことか。それは命をなげうった人たちの尊い犠牲の上に成り立っているんだ、って。その名前、声、思い、季節感…それを舞台を通じて、後世に残したい、若い人たちに伝えたいんですよ。とにかく、できるだけたくさんの人たちに知ってもらいたい、足を運んでほしい。
 そのためにも私がもっともっと「女優」として有名にならなきゃって思うんですよ。“戦争もの”の「色」がついたって構わない。というか、芝居で注目されるのならば、どんな色だってついた方がいい。例えば“脱ぐ話”は来てませんが(苦笑)、アピールできて出られるのならば、手段は問わない。芝居にはそれくらいの覚悟はあるつもりです。
 〈歴史が大好きなこともあって、NHKの大河ドラマにはぜひ出てみたいという〉
 どんな役でもいいんですよ。通行人でも死体でも構わないんです。大河に出るためにはどうしたらいいのか考え、実際にアプローチもしています。だけど「あの時代にそんな大きな女性はいない」とか「役がない」「バランスが」…とか。多分、断る理由はそれ以外にあるんですよ。「大林ってホントに芝居できるのか?」とかね。いつかギャフンと言わせたいと思うんです。
 “売れること”も、出られる手段の一つでしょうね。私は「バレーの大林」としての知名度はあっても、女優・タレントとしては、まだまだ売れていないと思っています。講演会で「私を知っている?」と問いかけても若い世代には知らない人も多い。そこは厳しいくらいシビアに自分を見ることができるんです。私の中の基準で売れている人というのは、芝居ならば、大河や朝ドラ、ブロードウェーもののミュージカルなどに出ている人ですよ。
 私は五輪の金メダルのように、1位以外は認めたくありませんから、最終的に「勝ち」にたどりつけるよう、ストイック(禁欲的)に目標に向けて必死に努力を続けるしかない。そこはバレーの現役時代と変わっていません。オファーがなければ、自分から売り込みの手紙を書く。小さな舞台で経験を積んでゆく。ボイストレーニングや殺陣、タップなどの技術を身につける。それが私のアプローチのやり方です。
 ただね、“売れること”は、やりたいことを実現する手段であって、それ自体を願ったことは一回もありません。私は大きな意味で、クリエーティブな表現、お芝居、演劇をしたい。それがテレビドラマでも舞台でもいいけど、今のところ舞台の方がチャンスがある。たとえ“キワモノ枠”であっても。(聞き手 喜多由浩)