挑戦者決定戦(下)快勝で矢代が三番勝負へ

第30期女流名人戦
第30期女流名人戦挑戦者決定戦、矢代久美子六段(左)-井澤秋乃四段

 黒 四 段 井澤 秋乃

 白 六 段 矢代久美子

 200手完、白中押し勝ち

 【102~200】持ち時間各3時間

 先番(黒)6目半コミ出し

 藤沢里菜女流名人(19)への挑戦者を決める大一番は、2月1日、日本棋院東京本院で打たれた。井澤秋乃四段(39)は昨年末に第2子を出産して体調が心配されたが、いつもどおりのさわやかな表情であった。

 100手を過ぎた段階で、すでに矢代久美子六段(41)の優勢が歴然としていた。記者室の検討陣は「よほどのことがないかぎり逆転は難しい」と一致したが、「一つだけ狙いが…」との声もあった。右辺の白一団が、完全には生きていないからである。

 中央、黒15とハネた瞬間、検討陣は息をのんで見守った。しかし矢代六段はしっかり白16と備えて“期待”を裏切った。黒15に対して参考図、白1から5と打ちたくなるところだが、黒6サガリの必殺パンチから14まで、白大石はトン死する。

 下辺、黒49のハネから53と切って事件は起きた。解説の釼持丈八段は「井澤さんが投げ場を求めたものでしょう」と推察した。白64まではセキ生きの形である。6目ほど予定されていた白地はゼロになったものの、黒は周囲でそれ以上の元手をかけており、差し引き黒はかなりの損をした。

 午後4時28分、井澤四段が投了を告げると、待ち構えていた取材陣が対局室に入ってきた。カメラのフラッシュが注がれた矢代六段の顔は、ほんのりと紅潮していた。内容が一方的だったので感想戦は短く、井澤四段はサバサバした表情で退室した。

 インタビューが始まり、矢代六段は本局を「見た目の地合はよさそうでしたが、黒は厚いので何が起きるか分かりません。最後までしっかりヨセなければいけないと思って打ちました」と分析した。

 本戦トーナメントを振り返って「牛栄子(にゅう・えいこ)二段、奥田あや三段と強い若手に勝てて、しかも挑戦者になれて率直にうれしいの一言です」と語った。挑戦手合については「藤沢女流名人とはまだ2局(1勝1敗)しか打っていないので、どんな碁になるかイメージがわきません。せっかくのチャンスを大事にしたいと思います」と抱負を述べた。(佐藤康夫)