インスタグラム 「映える」のはどんな写真か

平成30年史 デジタルが変えた文化(3)
東京都写真美術館のように写真を扱う美術館やギャラリーが増えた

 「インスタ映え」。昨年の流行語・新語に選ばれたこの言葉は、社会現象としても注目されたが、写真文化の大きな変化も示している。

 インスタグラムという写真共有アプリで、自分が撮った写真をネットで公開する。すると友人知人がほめてくれる。フォロワーが増えもする。そうした良い反応が期待できる「見栄えの良い」写真を撮る行動や願望が「インスタ映え」。

 それぞれが画面に独特の工夫を凝らし、表現したいイメージを求めて特定の場所に足を運んだりする。それは「作品づくり」と呼んでいいだろう。カメラを趣味にする人やプロの写真家の仕事だったことを、誰でも日常的にやる時代になったのだ。

 では、数ある写真の中で「映える」というのは、どんな写真なのだろうか-。そもそも写真を読み解く力(リテラシー)がないと「映える」「映えない」という判断はできないはず。そして、思い浮かべたイメージをうまく構成する技術と機材がなければ、撮ることもできない。

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 元号が昭和から平成に変わるころ、写真を美術作品として扱う美術館が相次いでオープンした。昭和63年に川崎市市民ミュージアム、平成元年に横浜美術館が登場し、2年に東京都写真美術館=が一部開館。同じように写真を売買するギャラリーも増えていった。

 それまで、多くの写真家はカメラ誌や写真誌を通じて、あるいは写真集という形で自作を発表していた。それが美術館やギャラリーでの展覧会というように、現代美術のような表現や着想をする人が増えていく。写真作品を美術館で鑑賞したり、ギャラリーで買ったりすることが常識になったのは平成に入ってからだ。

 東京都写真美術館は昨年、平成期をテーマにした企画展「TOPコレクション 平成をスクロールする」を開催。ホンマタカシ、川内倫子、蜷川実花ら、現代作家約30人の作品を3期にわたって展示した。担当学芸員の石田哲朗は、その作品群について「いまここにいる」という視点が特徴だと話す。

 「時代の大きな出来事ではなくて、身近なものを撮っている。これが『昭和』だと、もっと時代に密着した作品が出てくる。終戦から高度成長というわかりやすい構成になったりする。平成の写真は、共通性が少なく、作家性の強いものが多い。半径5メートル以内の写真とかいわれたりもします」

 私的な日常は「わかりにくさ」ともつながるのだが、鑑賞者の「見る目」が底上げされているという。

 「見えないものに対する感覚が鋭くなっている。文章でいう余白、行間ですね。画面に写っているものではなくて、並べていったときに感じるもの、立ちのぼる空気、作品のなかに流れる世界観というものに共感できる力がある」

 美術館やギャラリーで「作品」に触れる機会が増えて、写真のリテラシーは飛躍的に高まった。ネット時代が到来し、写真を端末で共有することを常識とする人々が、「映える写真」という実践を通じて、さらに感性を磨いている。それが「平成の写真」の現況。石田は、こうも話す。

 「共通するものがないのが『平成』の特徴かもしれません。それぞれバラバラに生きている。でも、同時につながりたいという願いも感じられます。異なるもの同士で認め合って、通じるものをみつけて、つながっていきたいという願望がある」

 インスタ映え、は流行して当然の言葉だったかもしれない。(敬称略)