群馬県草津町長・黒岩信忠(5)噴火の現実、決して忘れない

話の肖像画
志賀草津道路を視察=4月12日

〈今年1月の草津白根山の本白根山(群馬県草津町)の噴火により、宿泊キャンセルが続出。風評被害が懸念されたが、平成29年度に草津町を訪れた総入り込み客数は前年度比4%増、過去最高の321万人を記録した〉

 噴火から3月までの入り込み客数は前年に比べ5%ほど落ちましたけど、噴火直前までは好調なペースでした。箱根山のある箱根町(神奈川県)は27年の噴火以降、風評被害に1年半も悩まされたそうです。そう考えると、うまく乗り切ったといえるかもしれません。しかしまだ、リゾートホテルやペンションの予約は鈍いままです。完全に影響がなくなったわけではありません。

 〈町は噴火から6日後、観光客を呼び戻すための復興費として観光協会に2千万円を拠出。また、ふるさと納税を活用し、寄付を募ることを決めた〉

 ふるさと納税は、風評被害払拭へ向けた起爆剤になると思いました。町の返礼品は、町内で入浴や宿泊に使える「感謝券」です。寄付をしてもらうことは、草津町に来ていただけるということ。観光業が疲弊しないよう、町に人を呼び込みたかった。町の取り分を減らし、3月末まで返礼割合を3割から4割に増やしました。これが当たり、29年度の寄付金は14億円を超え、過去最高となりそうです。

 〈噴火を受け、町は本白根山のハザードマップ(危険予測地図)の作成に着手。住民や観光客の安全対策を急ピッチで進めている〉

 本白根山の噴火は全くの想定外だったので、何も作っていなかった。最悪の場合に溶岩はどこを流れるのか、火砕流は発生するのかといった点を明記します。噴石被害の出た「草津国際スキー場」(4月から「草津温泉スキー場」に改称)の山頂駅を廃止し、観測所として気象庁が地震計と空振計、町が高性能のライブカメラを3台設置しました。次の噴火が起きても、何か予兆があれば必ず捉えます。

 山頂付近のゲレンデとロープウエーの廃止も決断しました。「時間がたてばゴンドラも動かせるんじゃないか」という人もいるでしょう。そうかもしれない。でも、噴火という現実を決して忘れてはいけない。危険な場所に二度とお客さんを近づけてはいけない。安全対策が最優先です。噴石が直撃したゴンドラは60年の歴史があり、3代目でした。多くの投資をしてきた分、廃止の決断はつらかったですね。

 噴火以来、私は「草津町は嘘を言わない、隠しごとをしない」と言い続けてきた。噴火した山を隠さず、「あえて見せる」方針で、観光協会の公式サイト上では火口付近のカメラ映像を公開しています。

 〈草津白根山の白根山の噴火警戒レベルが今月22日、1から2(火口周辺規制)に引き上げられた。冬季閉鎖を終えて20日に開通したばかりの観光ルート「志賀草津道路」(国道292号)が一部区間で通行止めとなり、観光への影響が懸念される〉

 ここまで天は試練を与えるのか、火山とともに生きるとはこういう意味か、と思いました。残雪がつくる絶景を皆さんにお届けしたかった。これまで順風満帆な人生ではなかったし、逆境を乗り越えてきました。風評被害も心配ですが、淡々とやっていくだけです。火山がないと温泉は湧きません。恵みに感謝しながら、正しく恐れ、さらに元気な草津町を実現していきます。(聞き手 吉原実)=次週休み。次回は野球解説者の佐々木信也さん