群馬県草津町長・黒岩信忠(1)町長選当選2日後の噴火

話の肖像画
町長室で(吉原実撮影)

 〈訓練中の自衛隊員1人が死亡し、スキー客ら11人が重軽傷を負った草津白根山の本白根山(群馬県草津町)の噴火。23日で3カ月たったが、落ち着かない日々が続く〉

 噴火した1月23日、その瞬間は自宅にいました。1月21日が町長選で3期目の当選が決まったばかり。22日に役場で当選証書をもらいました。その翌日に役場から電話で「町長、噴火しました!」と。

 家は高台なので、噴火の様子が見えました。悪い夢を見ているような気がして、焦ったというか。すぐに気を取り直して役場へ駆けつけ、対策本部を立ち上げ、自衛隊の派遣を要請しました。

 草津白根山は白根山や本白根山などの総称で、以前から噴火を繰り返していたのは白根山です。本白根山の噴火は全く想定していなかった。言葉にならないくらいの衝撃でした。

 人命保護の対応をしながら、恐れたのは風評被害です。町はお客さんがきてなんぼの世界。白根山が噴火警戒レベル1からレベル2になった4年前も風評被害が起きました。「元気な町を作る」という思いで平成22年から町長を8年間務め、町の財政をV字回復に導きました。そこに天からゲンコツをもらい、「めちゃくちゃになる」と思いました。

 〈草津温泉は全国的な名湯として知られ、観光客を集める。本白根山から温泉街まで約7キロ。1週間の宿泊予約キャンセルは延べ約3万3千人に上った〉

 今だから言いますが、噴火した翌日の24日朝6時半ごろ、あるホテルのオーナーから電話が入り、大手の旅行エージェントの社長にこれから会うので、「何か安全であると訴えるものを書いてくれないか」と言われました。そこで「安心して草津温泉にお越し下さい」という文章を書き、公開したんです。勇気が必要でしたね。一つ間違えると、責任問題に発展しかねない。

 数日後には商売をやっている町民を集めました。皆、不安そうな顔でしたね。本当に安全なんだろうか、お客さまが途絶えてしまうのではないか、と。

 〈2月、全国有数の温泉地としてライバル関係にある大分県別府市が「今は、別府行くより、草津行こうぜ。」と呼び掛けた広告を市のホームページに掲載し、話題になった〉

 遠く離れた別府の方に応援いただき、本当にありがたかった。27年に箱根山(神奈川県)が噴火し、風評被害に悩んだ箱根町の町議会も視察に来て激励してくれました。ともに火山と共生している町です。私はこの町にほれています。今後も魅力を高め、今まで以上のお客さまを迎えることができると確信しています。(聞き手 吉原実)

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【プロフィル】黒岩信忠

 くろいわ・のぶただ 昭和22年、群馬県草津町生まれ。山本一太参院議員の父で同町出身の元農林水産相の富雄氏の選挙活動を支援していたことがきっかけとなり、58年に草津町議に初当選。平成21年まで7期務め、町議会議長も歴任。22年、バブル期以降観光客の減少が続いていた町の改革を目指して、町長に。観光の目玉であり、町のシンボルでもある湯畑周辺の再開発を推進し、全国有数の温泉地として知られる草津温泉の復活を牽引(けんいん)する。今月22日、草津白根山の白根山(湯釜付近)の噴火警戒レベルが再び2に引き上げられた。