【話の肖像画】喜劇役者・大村崑(5)最期は「赤い霊柩車」に乗って - 産経ニュース

【話の肖像画】喜劇役者・大村崑(5)最期は「赤い霊柩車」に乗って

「オロナミンC」のコマーシャルのポーズで(志儀駒貴撮影)
 〈日本喜劇人協会の8代目会長(現会長は小松政夫)。今も後進の指導にあたり、喜劇への情熱は色あせない〉
 喜劇は、脚本に稽古場でアドリブや修正を加えて練り上げ、ようやく舞台に出します。でも、今のバラエティー番組はボスがいて、ボスにかわいがられるグループがひな壇に並ぶ、という構図になっているみたい。そこで生まれるのが「笑い」だと誤解している人が多い、と思っていました。
 ところが最近、ちょっと考えが変わりました。「ダウンタウンDX」に出演する機会があってね。司会の浜ちゃん(浜田雅功)が「そりゃないね、崑ちゃん」なんて気安く言ってきたら、「誰にでもやるな!」と叱ろうと思っていたんですよ。でも楽屋入りのときから、すごく気を使ってくれて。まあ、よく考えたら大事にしてくれるはずです。もう86歳ですから。
 〈昭和35年に結婚した5歳年下の瑤(よう)子夫人とは、3月で59年目に入った。最近はテレビでの共演も多く、おしどり夫婦として知られる〉
 今年の結婚記念日は有馬温泉(兵庫県)へ行きました。昔は海外へ行ったりしたんですけどね。
 瑤子さんはカンツォーネ歌手になる夢をあきらめて僕と結婚し、2人の男の子を産んでくれました。長男は独立、次男はハリウッドで映画の助監督をしたこともありました。瑤子さんも日本のネイルアートの先駆者として活躍していたんです。でも、僕のご飯を作ってくれなくなるほど忙しくなり、結局は辞めさせてしまいました。代わりに、歌だけはやらせてあげたくて、僕が北島三郎さんの長期公演に出演する1カ月間、海外へ勉強に行かせました。この習慣は、公演がなくなってからも続きました。おかげでナポリのコンクールで優勝したんですよ。
 ここまで僕に尽くしてくれて本当にありがたいと思っています。でも、テレビ番組で「生まれ変わったら崑さんと結婚するか」と聞かれ、「いや、違う人のほうが…」と言っていましたが。
 〈医師に「40歳で死ぬ」と宣告されながら、今年11月には87歳を迎える。テレビや舞台のほか、高齢者を対象にした講演も増えている〉
 敬老会や自治体から「元気な崑ちゃんを見せてあげて」と呼ばれます。僕と同じ昭和6年生まれの人に手を挙げてもらっても少ない。「僕はあなたたちより年上なんですよ」と励ましています。歯も全部自分のものですし、食事は1時間ぐらいかけてボリボリとやっています。これまで頼まれた仕事を休んだり、代役をお願いしたことは一度もありません。
 金婚式のパーティーで、落語家の月亭八方君に「何歳まで生きるんですか?」と聞かれ、「100歳」と言ったらあざといので、リアル感を出して、「102歳の秋にコスモスに包まれて消えます」と言いました。
 コスモスが好きでね。あの花は、派手な匂いがしないし、強風で倒れてもあくる日にはちゃんと立っている。どんな困難にも負けずに頑張る自分を見ているようで。それを棺おけに入れてもらって、(代表作の)「とんま天狗(てんぐ)」のテーマ曲をかけて、(レギュラー出演する人気ドラマシリーズの)「赤い霊柩車(れいきゅうしゃ)」に迎えに来てもらいます。そこまでは元気に生きたいですね。(聞き手 豊田昌継)
 =次回は群馬県草津町長の黒岩信忠さん