準決勝第2局(上)奥田、布石でつまずく

第30期女流名人戦
矢代久美子六段

 黒 三 段 奥田 あや

 白 六 段 矢代久美子

 【1~100】持ち時間各3時間

 先番(黒)6目半コミ出し

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 本戦トーナメントの左ブロックでは挑戦者候補の大本命、謝依旻(しぇい・いみん)女流棋聖(当時)が、2回戦で桑原陽子六段に敗れる波乱があった。その桑原も準決勝で、井澤秋乃四段に討ち取られてしまった。

 昨年11月30日、日本棋院東京本院の7階特別対局室で、右ブロックの準決勝、矢代久美子六段(41)対奥田あや三段(29)戦が行われた。

 矢代六段は直近で5連勝と好調。本戦1、2回戦では知念かおり六段、牛栄子二段という実力派を連破して勢いに乗った。初の女流名人戦三番勝負挑戦に向けて、気合が入っている。

 一方、奥田三段は1回戦で新鋭の上野愛咲美初段(当時、現女流棋聖)を、2回戦で鈴木歩七段を下した。直後の女流棋聖戦準決勝でも、同じく鈴木に連勝して決勝に進出と、こちらも絶好調だ。

 アルファ碁登場からわずか2年足らずで、AI(人工知能)全盛時代を迎えた。最近のプロ棋士の対局で、その影響を受けない布石は皆無と言っても、過言ではあるまい。この碁でも例えば黒19の小ゲイマ受け、右下隅の黒27から35までの折衝などが、AI流である。

 黒37のハネは手厚いが、奥田三段が布石で遅れた要因となった。解説の楊嘉源九段は「黒37は参考図、黒1のハサミが好点でした。次いで白2なら黒3、5がピッタリ。以下黒13までとなっては、白が思わしくありません」と指摘した。したがって白2では何か工夫が必要だが、どう応じるか悩ましい。

 白40では「白90のアテを先に決め黒42ヌキの時、白A、黒Bの交換をするのが無駄のない運びです」と解説者は続けた。続いて白56ヒラキの展開となれば、白の流れはさらに加速しそう。

 白60ヒキで昼食休憩に。ここまでは互いに早い進行だ。

 再開後、黒77から91、93と奥田三段は地を稼ぐ作戦に出たが、白は各所に地を持って収まっており、黒がコミを出すのは、すでに容易ではない形勢だ。

 なお、白80では一見、白84のシチョウが成立しそうだが、次に黒C、白Dが巧手で、白はうまくいかない。(伊藤誠)