【話の肖像画】平昌パラアイスホッケー代表・上原大祐(5) 子供たちが喜んでくれた - 産経ニュース

【話の肖像画】平昌パラアイスホッケー代表・上原大祐(5) 子供たちが喜んでくれた

日本財団「HEROs」プロジェクトの記者会見(前列右の車いすの男性)=昨年10月
 〈平成26年にNPO法人「D-SHiPS32」を立ち上げ、代表(船長)に就任した。Dはドリーム、子供たちに夢を運ぶ船という願いを込めた。健常者と障害者が共生できる社会、パラスポーツの普及、発展のための活動を続けている〉
 シンプルなんですよ、健常者と障害者が交わる機会をひたすらつくる。たとえば「車いすスポーツGOMI」。車いすの乗り方やサポートの方法を学んだり、ゴミ拾いを通じて、自分が住んでいる街のバリアフリーの状況も知ることができる。
 農業体験やキャンプ、地引き網…いろんなイベントを通じて健常者と障害者がコミュニケーションをとり、理解を深めてゆく。地方にも、どんどん輪を広げたい。各地の大学には「D-SHiPS32」のサークルをつくりたいと思っているんです。大学生が動けば、地域にも根付くでしょう。
 特別支援学校にフォーカスした活動も考えています。そこの体育館なら車いすバスケットをやっても「床が傷む」と文句を言われることがありませんからね。各地の特別支援学校をパラスポーツのコミュニティーの拠点にして地域の人も巻き込んでゆく。
 やりたいことがいっぱいあるんです。ゲーム感覚で「障害者の雇用攻略本」を出す、障害者手帳を持っている人しか先生になれない学校を開校する。福祉という視点ではなく、「ものづくり」という、違った観点から課題を解決してゆく。
 今回、パラアイスホッケーのスティックを町工場でつくってもらいました。スレッジ(そり)もつくってみたい。僕も着物を着てみたかったので“2分で着られる着物”もつくりました。海外の人たちや、着付けが分からない人たちに広がってゆく可能性がある。「障害者×伝統文化=産業」ですよ。
 奄美大島では、バリアフリーマリンスポーツリゾート「ゼログラビティー」もやっています。カヤックで36キロを漕(こ)ぐ。僕も出ることで、「やればできるんだよ」という環境を広げたいと思う。ちょっと体はシンドイですけど(苦笑)。
 〈昨年秋には、スポーツ選手の社会貢献活動を推進するプロジェクト「HEROs」(日本財団主催)のアンバサダーにも選ばれている。19人のアンバサダーは他に、サッカー元日本代表の中田英寿氏、米大リーグのヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏、ボクシング世界チャンピオンの村田諒太氏、女子バレー元日本代表の大林素子さんら、そうそうたるメンバーがそろった〉
 これからいったいどんなことができるのか、プランを練って、形にしていきます。とにかく世界レベルのすごい顔ぶれですからね。僕自身も楽しみだし、とてもワクワクしていますよ。
 僕がいったん競技生活を引退したのは、NPO法人などの社会貢献活動に集中したかったからです。競技をしていると、土、日は練習や試合でつぶれてしまいますから。
 今回、(平昌大会を前に)選手に復帰したことで、とても良かったと思うことがあります。たくさんの子供たちが応援してくれたこと。一勝もできなくて申し訳なかったけど、皆、「そんなことない。(パラスポーツの)楽しみを知った」と喜んでくれました。僕が伝えたいことは届けられたのかな、ってうれしかったですね。(聞き手 喜多由浩)=次回は喜劇役者の大村崑さん