【話の肖像画】相沢病院理事長・相沢孝夫(5) 自分で目標をつくること - 産経ニュース

【話の肖像画】相沢病院理事長・相沢孝夫(5) 自分で目標をつくること

平昌五輪で小平奈緒の金メダルを小平の父、安彦さん(右)と喜ぶ =2月18日、韓国・江陵(桑村朋撮影)
 〈信州・松本の地に相沢病院が開設されて110年。院長に就任した当時は職員570人だった病院は、今や職員1800人の大組織になった〉
 相沢病院には2つの流れがあります。1つは110年にわたり地元に密着した医療をやってきた流れ。往診だったり訪問介護、訪問看護だったりがそれです。もう1つは救急医療。救急をやるとどんどん医療が高度化していき、患者さんも遠くからいらっしゃるようになる。同じ医療でも、置いている軸足というか基盤が違うんですよね。
 相沢病院にこの2つが同居していたのは歴史の流れです。この状況に対応しようと、急性期医療と在宅医療の橋渡しを行う地元密着型の相沢東病院を2年前に開設しました。一方で、相沢病院にはどんどん機械をそろえ、専門の先生に来てもらって、高度急性期をやっていきます。基盤が違うので、働く人も分けた方が働きやすいだろうと思って、そういう具合にしています。
 〈平成29年には、全国約2500の病院が加盟する一般社団法人「日本病院会」の会長に就任した。日本の医療は今後、どうなるのか〉
 高度急性期や大変な治療を必要とする患者さんは今後、減っていくでしょう。統計を見ていてもそういう方向に行っています。だから、高度な医療というのは集約化、集中化するしかないと思うんです。
 一方で、地域密着型というのは、今後すごく大事な部分です。75歳以上のお年寄りが増える中で、地元に住む高齢者をきちんと診て、地域を守っていく医療、さらには病院から出ていって、予防だとか健康づくりだとか健康寿命延伸だとか、そういうことをやっていくことも重要になる。
 そこには救命救急のような高度な医療が必要な人はそんなにいない。地元で住民にしっかり根を張り、地域づくり、健康づくり、予防医療もやっていく病院をあちこちにつくってもらいたいと思いますし、それを盛んにアピールしています。
 〈働き方改革が進む中、医師の働き方も問題となっている〉
 これだけ価値観や考え方が多様化する中で、皆が納得する働き方ってないと思うんですね。「うちはこういうことをやっている」と示し、そういうことをやりたいという人の受け皿になれればいい。全部の病院が同じことをする必要はないと思っています。そして、働く側は自分で自分の目標を作ること。そうすれば失敗も自分の責任だし、成功すれば僕らもきちんと評価をし、ありがとうと伝える。優秀な若い人はいっぱいいますから、いかにやる気にさせ、やりがいを持って働いてもらうかです。
 〈そんな相沢病院を頼って就職した一人がスピードスケートの小平奈緒だ。金メダルを獲得した平昌五輪後、長野県茅野市で行われた凱旋(がいせん)パレードでは市民ら1万5千人が祝福。相沢病院の名前も全国区になった〉
 彼女を支えるため無理したこともないし、広告塔になってほしいなんてことも考えていなかった。今も考えていません。ごく自然の流れが今につながっているだけなんです。どこの院長や理事長も味わえないことを味わわせてくれて、職員も患者さんも喜んでいます。僕の思いは一言だけ。小平さん、ありがとう。それだけです。(聞き手 道丸摩耶)=次回は女流棋士第1号の蛸島彰子さん