【話の肖像画】大阪大教授・関谷毅(41)(5)テクノロジーで「神の手」に - 産経ニュース

【話の肖像画】大阪大教授・関谷毅(41)(5)テクノロジーで「神の手」に

(川口良介撮影)
 〈平成28年12月、日経ビジネスが選ぶ「次代を創る100人」に、ソフトバンクの孫正義社長や将棋棋士の藤井聡太さんらとともに紹介された。研究内容は国内外で注目を浴びている〉
 自分一人の力ではありません。共同開発をしてくれたさまざまな分野の方々が、手を貸してくださったおかげです。
 私の技術にとどまらず、人工知能(AI)を搭載する小型センサーなどの電子部品や素材の分野で日本企業が活躍し、最先端技術の縁の下の力持ちになっています。私も新しい製品やシステムを開発する上で、こういった国産技術を積極的にアピールしていきたいと思います。
 〈最新のテクノロジーは、名医の技術を再現できるかもしれない。高度なカテーテル(血管などに挿入する管)治療をAIが行える技術開発も検討する方針だ〉
 例えば、足の血管から脳血管へと到達させるカテーテル治療は非常に高いレベルの技術が求められます。熟練の技術を持った一部の名医にしかできない手術や治療もあります。そうなると、受けられる患者の人数も限られてしまう。その課題を解決するのが、最新のテクノロジーだと思っています。
 私がカテーテル治療の分野で考えているのは、AIを活用して体内の目標地点までカテーテルが自動的に血管に合わせて形状変形しながら挿入できる技術です。まるで自動車の自動運転のように、医師の手を介さなくてもカテーテルが順路を模索して動いてくれるというイメージですね。まだ本格的に開発まで進んでいませんが、いつか実現したいビジョンの一つです。
 専門性の高い人材はいきなりは増やせません。ましてや、名医ともなると本当に限られ、一握りの人材になります。進化したテクノロジーで少しでも「神の手」に近づければ、助かる患者は確実に増えると確信しています。
 〈AIは医療などの現場で人命を救う半面、軍事転用される危険性もある。テクノロジーが紛争の被害を増大させる恐れもあり、規制の在り方も議論されている〉
 私は基本的に、テクノロジーは常に人のためにあるものだと思っています。人を傷つけるものであってはなりません。ただ、その半面、AIの軍事利用を止めることは非常に難しいと感じています。AIやモノのインターネット(IoT)の技術の応用は柔軟に変えることが可能で、残念ながら軍事転用することは可能かもしれません。私自身、自分の技術が知らないうちに軍事転用される恐れを全く感じないかというと嘘になります。
 また、AIを多様な分野に応用しようとする人たちの中には、テクノロジーを過信している傾向が強いのも気になります。テクノロジーは人を助けることができますが、人に完全にとって代わることはまだ難しいのが現状です。人は過去の経験に基づき、意味を理解し、瞬時に正確に状況判断することができますが、AIはまだまだ未知数で、予想しない暴走をしてしまう恐れもあります。
 矛盾するようですが、テクノロジーの進化を信じるとともに過信してはならない。慎重に大切に活用していく必要があるのです。(聞き手 板東和正)=次回は相沢病院理事長の相沢孝夫さん