「死にたい」は「生きたい」…SNSは悩みの受け皿、自殺対策で一律規制に懸念

座間9人遺体
【座間遺体遺棄事件】白石隆浩容疑者自宅アパート前=11日午後、神奈川県座間市(佐藤徳昭撮影)

 神奈川県座間市で9人の切断遺体が見つかった事件で、政府は被害者の多くが自殺願望を書き込んでいたツイッターなどSNS(会員制交流サイト)への対策強化を打ち出した。ただ、若者への自殺対策でネットの有効活用例があり、対策に取り組む団体などから一律規制に懸念の声が出ている。SNSに気持ちを吐き出していた子供がさらに内にこもり、助けを求める声をすくい取る手段が失われることが危惧されている。(天野健作)

事故死上回る若年層

 「犯罪史に残る極めて残忍で凶悪な事件で、強い憤りを覚える」。菅義偉官房長官は10日の関係閣僚会議でこう述べ、「自殺に関する不適切なサイトや書き込みへの対策を強化する」と明言した。警察庁の坂口正芳長官も9日の記者会見で「SNS利用をめぐる問題は警察を含め、関係機関が緊密に連携し、社会全体で対応していくものだと認識している」と話した。

 この事件では、白石隆浩容疑者(27)=死体遺棄容疑で逮捕=が、SNSを使って自殺願望を打ち明ける10~20代の若者を、言葉巧みに呼び出していたことが判明している。

 警察庁によると、平成28年の自殺者数は2万1897人で20代以下は2755人。15~34歳の自殺率は事故などによる死亡率の2.5倍で、先進国の中で自殺が事故死を上回るのは日本だけだという。

 今年7月に5年ぶりに改定された自殺総合対策大綱では若年層に対し学校などでの自殺対策推進が盛り込まれた。特に厚生労働省はネットやSNSを通じた相談体制構築や支援策の周知に取り組む。

検索すると相談窓口

 東京のNPO法人「OVA」では、グーグルの検索窓に「死にたい」と打つと、目立つ位置に「話をきかせてください」という同法人のメッセージが出る取り組みを進めている。クリックすると、専門家にメールを送る画面が出る。人員の制約から対象は東京都新宿区在住などに限られるが、4年間で約600人の相談が寄せられたという。

 ツイッター社の日本法人は事件後、「自殺や自傷行為の助長や扇動を禁じます」との項目をツイッターのルールに追加するなど、業者の自主的取り組みも進んでいる。

被害に遭う子供最多

 一方で、顔や名前を知らない他者とも簡単に交流できるSNSには犯罪のリスクが潜み、規制検討の根拠になっている。SNSを使って犯罪に巻き込まれた子供は後を絶たず、警察庁によると、被害に遭った18歳未満の子供は今年上半期(1~6月)で919人で、半期として過去最高を更新した。

 だが個人間のメッセージを規制するのは難しく、SNS対策を検討している政府関係者は「表現の自由とか通信の秘密などデリケートなものが絡む。何ができるかは分からない」と険しい表情を見せる。

 「自殺総合対策推進センター」(東京)の本橋豊センター長(公衆衛生学)は今回の事件について「被害者が発していた『死にたい』という声が、悪意を持った人物と不幸にもつながってしまった。その声は『生きたい』というSOSだ」と強調。「そうした声を適切な窓口に橋渡しし、SNSを一律に規制するのではなく、時代に合った形で変えることが求められている」と話している。