国宝・重文12城が危ない? 熊本地震では対策の有無で明暗、専門家「補強の重要性証明された」

 
地震で瓦などが崩れ落ちた熊本城=2016年4月撮影

 江戸時代までに築城され、天守が現存する全国12城(現存天守12城)の一部で今夏、耐震不足が判明したり、天守のしゃちほこの破損が確認された。夕刊フジが確認したところ、すでに耐震工事を済ませたのは姫路城(兵庫県姫路市)のみで、耐震診断を実施したのも4城にとどまる。昨年の熊本地震で熊本城に深刻な被害が出たことも踏まえ、城に詳しい専門家は早期の耐震補強の必要性を指摘する。(夕刊フジ)

 国宝または重要文化財に指定され、ファンも多い現存天守12城。その名城の一部で7月、危険や被害が発覚した。

 国宝に指定されている松本城(長野県松本市)では耐震診断の結果、天守の一部である「乾小天守(いぬいこてんしゅ)」が、震度7の地震で1、2階部分が倒壊する恐れがあると判明、同月15日から乾小天守への入場が禁止となった。

 同じく国宝である犬山城(愛知県犬山市)では同月12日夕、天守北側にあるしゃちほこの尾の部分などが破損しているのが見つかった。11日までは異常はなく、12日夕の落雷の衝撃で破損したとみられている。

 震度7の強い揺れを2度観測した昨年4月の熊本地震以降も各地で地震は続いている。地震だけでなく、福岡、大分両県を襲った九州北部豪雨のような災害も起きている。

 各地の城は大丈夫なのか。夕刊フジでは現存天守12城の耐震状況や落雷対策を調べた。すると、避雷針については全城で備えられていたが、耐震工事を済ませたのは姫路城(兵庫県姫路市)だけで、耐震診断を済ませたのは4城、予備診断にとどまっているところが7城に上った。

 耐震診断を済ませた4城ではそれぞれ、耐震工事を予定に入れている。弘前城(青森県弘前市)は現在、石垣修理中で天守を移動させており、元の場所に戻ってから本格的な耐震工事を予定している。犬山城と松江城(松江市)は2018年度から耐震工事を始める予定で、松本城についても「耐震工事の早期着工に向け、取り組むのが大前提」(松本市)とする。

 予備診断にとどまっている7城のうち、彦根城(滋賀県彦根市)については今年度に耐震診断を予定。丸岡城(福井県坂井市)は耐震診断を実施する方向で準備を進め、高知城(高知市)については「来年度以降に耐震基礎診断を行えるよう調整をしていきたい」(高知県)としている。

 残る備中松山城(岡山県高梁市)、丸亀城(香川県丸亀市)、松山城(松山市)、宇和島城(愛媛県宇和島市)も予備診断で特に問題はなかったが、耐震診断や耐震化を検討する必要を感じている自治体もある。

 城の耐震化の重要性について、奈良大学の千田嘉博教授(城郭考古学)は熊本地震に見舞われた熊本城を例に挙げ、「昭和の修理の際、最低限の耐震補強をしていた5階建ての宇土櫓(うとやぐら)は耐え抜いて、十分に耐震補強されていなかった平屋建ての続櫓(つづきやぐら)がつぶれてしまった。やはり、耐震補強対策をしっかり打つことの重要性が証明されたと思う」と話す。

 宇土櫓の耐震補強は、鉄骨フレームを要所要所にはめ込み、木造の櫓でありながら鉄のフレームが所々に見えるという決して見栄えのいいものではなかったという。だが、その補強が功を奏した形で、「木造の建物で金属のフレームが見えると『これは何だ』と思うかもしれないが、当座の補強をしておいたほうが良いのではないか」と指摘する。

 さらに建物の耐震補強と建物を支える石垣の構造強化をセットで考えなければいけないとする。だが、莫大(ばくだい)なお金がかかるうえ、修理中で城が見学できないとなると地域の観光経済にも打撃を与えかねない。

 千田教授は「姫路城の平成の大修理では、修理そのものを見せるという画期的な方法が取られ、大好評だった。姫路城にならって、『見せる工事』で本物のすごさや伝統の技を見てもらって、改めて城の魅力を世界の人に感じてもらうという作戦や発想の転換も求められているのではないか」と提言した。