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本木雅弘「あえて居心地の悪いことをやった1年」--「本当に自分がつかめない」といいながら新境地を切り開いてきた男がここにいる

 大河ドラマ『麒麟がくる』でヒールな斎藤道三役を演じ、また同時期に放送された密着ドキュメンタリー番組での〝さらけ出し〟が話題を呼んだ本木雅弘は、50代のなかばにさしかかり、「人生ラストスパート」と口にする。GQ MEN OF THE YEAR 2020の「アクター・オブ・ザ・イヤー」に輝いた複雑な役者が、その演技の奥義の、その奥にあるこころを開いてみせた。

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自意識と格闘した39年

 39年前にアイドルとしてデビューして以来、本木雅弘は何層にもわたり、かつ複雑に絡みあった自意識とともに生きてきた。

 「15歳からまわりにおだてられて生きてきたので、自分に対する都合のいい肯定感があるんです。表向き『いやいや、私なんてまだまだ』とネガティブなふりをしていると、必ず誰かが持ち上げてくれるし、それを待っている自分がいる。でもその自分をまた俯瞰して、冷静に眺めている自分もどこかにいるわけです。ずっと表にさらされて生きてきているので、本当の自分が自分でもつかめない。すべてが自己演出のようなものであり、なにが本来の姿かということも見えなくなっている気がするし、それすら麻痺してしまって、そんなもの見えなくたっていいじゃないかと思うこともあるんです」

 自らを俯瞰する本木雅弘。それは撮影中にも感じていた。カメラマンに指示されるよりも先に、カメラマンが撮りたいであろうポーズをとる。レンズを睨み、すっとその目線を外し、ポーズを変え、指先にまで神経をいきわたらせて、動き続ける。強さ、美しさ、妖しさ……見せたい自分、見えるべき自分を完璧に理解している。見ている側としては、そのプロフェッショナリズムには感服するしかない。だが、本木はそんな自分をもどこか冷ややかな目で見ているのだという。

 「今日も撮られながら、少しでもよく写ろうと思ってつい欲をかいてしまうわけです。でも同時に中高年の自己陶酔も恥ずかしいよな!? なんて考えたり。ナルシスティックに向かう自分と、本気のナルシストだと思われたくない自分と、という意味不明なところで揺れているんです。そりゃ、しんどいですよ(笑)。すごくしんどいのに、毎回こうなっちゃう。もっとありのままに自分を開放できたら、楽しく生きられるのかもしれませんけどね」

 言葉だけを読んでしまうと、とてつもなくネガティブな人物だと思われるかもしれない。だが、自身を語る彼の口調はすこぶる明るい。ネガティブなことをあっけらかんと口にするのだ。自意識過剰で明るくネガティブ。そこに不思議に魅力が漂ってくる。

「美濃のマムシ」

シャツ \58,000〈HAIDER ACKERMANN/三喜商事〉  その他私物
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 そんな本木雅弘にとって、2020年は「あえて居心地の悪いことをやる」年だったという。大きな話題となった大河ドラマ『麒麟がくる』で、美濃の戦国大名であり戦国史に名を残すヒールとして知られる斎藤道三役を引き受けたのも、同時期に放送された密着ドキュメンタリー番組への出演を受け入れたのも、そしてGQ MEN OF THE YEARを受賞することにしたのも、「居心地の悪さ」を求めてのことだと語る。

 「もう50代もなかば。人生ラストスパートの入り口にきている。だからここにひとつ節目をつくろうと。あえて自分にとって居心地の悪いことをやっていくうちに重くかさなりあった自意識を打ち破って、リバウンドできるんじゃないかと思ったんです。もしかしたら役者ではない道がひらけるかもしれない。ここが転換点になるかもとか。もちろん現実には、役者以上に自分に馴染んでいる仕事はない。そのことはわかっているんですが、どこかで役者なんていつやめてもいい、これは自分の天職ではないという意識も必要だと思っている。逃げ場やエクスキューズをつけて逆に自分を追い込んで再生していくというか。本当はだれよりも貪欲だし、しつこいし、図々しいし、ずる賢い。だから魑魅魍魎だらけの芸能界を生き延びてこられた。ゆえに時々の戒めも必要なんです」

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