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将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない 淡々と王道を行く「ゆとり世代」名人、佐藤天彦

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将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない 淡々と王道を行く「ゆとり世代」名人、佐藤天彦

「もちろん焦りはあるんですけど、それだけに気持ちを委ねないというか、焦りだけで勉強方法を変えてしまったりするのは違うんじゃないかというのがあったので。もちろん早く自分も上に行きたいという気持ちもありつつも、自分の勉強法としては、しっかりと、長期的な視野を意識しながらやっていた、ということですね」

そうして2016年、子どものころからの憧れだった羽生善治名人(当時)をやぶって名人位を奪取した。じつはこのとき、天彦八段は負けが込んでいた。第1局に負け、別の棋戦でも負け、第2局を迎えた時には6連敗中だったのだ。

「だから非常に調子は良くなかったんですけど、そこで第2局に向かって気持ちを切り替えて、作戦も切り替えた。作戦がうまくいったわけではなかったんですけど、最終的には、ねじりあいのなかで、最後は逆転勝ちすることができて。はい」

そのときにはなにか降りてきたんですか?

「降りてきたというか、最善のがんばりをしていくなかで、相手にとってむずかしい状況をつくっていった。それで最後は向こうがミスをしたということなんですけど。う~ん、最後、ギリギリの土俵際で持ちこたえられたのが最後の相手のミスに繋がったというところですね。ひらめいたというよりも、粘った、持ちこたえたという印象です」

メンタル面で、持ちこたえられた理由、あるいは秘訣はありますか?

「新しい気持ちで、第2局では作戦も変えて、と言いましたけど、それによって新鮮な目で見ることができた。高いモチベーションで新しい作戦で臨むことができたことによって、局面が悪くなったときも闘志を失わずに頑張れた。それと、もちろん勝つためにやるんですけど、同時に名人戦で羽生さんのような人とやれるんだという幸せというか、楽しさみたいなものもちゃんと思い出してできればいいと思いました。勝負を意識しすぎると、それだけじゃ勝てないというか、やっぱり対局の場ではすべてをさらけ出す感覚になるので、そこでは将棋に対する気持ちみたいなものが試されるというか。将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない。打算はあってもいいんですけど、それはなんていうんですか、最後、持ちこたえる部分にはきかないというか」

絶対に勝って、賞金でまた洋服を買うぞ!

ではダメだと。

「対局の前にそういうことをなんとなく思うのは、いいと思うんです。それをモチベーションにしたこともあります。すごく好きなコレクションがあったりして、まだまだお金がなかったときとか、勝ってこのコレクションを買いたいと思ったこともありました」

ファッショニスタとして知られる天彦名人の面目躍如かもしれない。彼はみずからの欲望にたいして正直というか、素直な人なのだ。迎えた2017年は一大将棋ブームとなり、名人にとっても前年以上のビッグ・イヤーになった。

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