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将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない 淡々と王道を行く「ゆとり世代」名人、佐藤天彦

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将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない 淡々と王道を行く「ゆとり世代」名人、佐藤天彦

小学校3年生にして志す

なぜ棋士の道を選んだのか? 天彦名人は独特の、ちょっと甲高い声でこう答える。

「いや、ま、将棋が好きで、もっと強い人とやりたいという気持ちもありましたし、好きな将棋を職業にしたいという気持ちもあったので。その流れで、プロ棋士の養成機関である奨励会を受験しようと思いました。年齢制限があるので、子どもの時からそういうことを意識するような感じになっているんですよ。まわりの大人たちにも、『きみはプロになるの、ならないの?』みたいな感じで言われることもありますし、プロの道に進むのか、趣味のままにするのかという分かれ道はけっこう早い段階からあるんですよね」

天彦名人は小学校3年生でプロを志した。自分だったら名人になれる、と思ったから?

「あんまり、そういうふうには思っていなかったですね。地元は福岡で、いろんな大会には出ていたんですけど、圧倒的に勝っていたというわけではないですし、自分自身、奨励会に入ったとしてもどれだけ成算があるか、というとそれはわかってなかった。とにかく好きな将棋がしたいということで飛び込んだ感じです」

奨励会には小学校4年生で初挑戦。受験者同士で戦う一次試験は4勝2敗、現役奨励会員との二次試験は3戦全敗。しかし、翌年再チャレンジして、見事合格を勝ち取った。奨励会で待ち受ける年齢制限とは、満21歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を含むリーグ戦終了までに四段になること。四段すなわちプロ、であるが、プロになれなかった場合は退会となる。

「普通の若者は誕生日が来るとハッピーな気持ちになるのでしょうが、奨励会員は違います。『ああ、また年齢制限に一歩近づいた』と、苦しい気持ちになるのです」と、自著『理想を現実にする力』(朝日新書)に書いている。プロ棋士は原則1年で4人しか誕生せず、奨励会入会者の約8割が脱落する。全員が神童と言われた子たちだろうに。

8年間の修業期間を経て、前述のように、18歳、高校卒業後、半年でプロとなった。勝ち負けの世界。勝てないときもある。そんなときでも天彦名人はマイペースで、コツコツと独自の勉強を続けた。

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