“やばい。キターーーーーーーッ! ”と興奮するホットハッチ、それが新型ポロGTIだ

 

 フォルクスワーゲンのコンパクトハッチ、「ポロ」のスポーツグレード“GTI”が日本にも上陸した。同車の国際試乗会にも参加した山田弘樹が日本仕様に早速試乗した。

文・山田弘樹 写真・安井宏充(Weekend.)

 このクルマに乗ったら、運転がうまくなる! 遂に日本導入となったポロのハイパフォーマンスバージョン、「GTI」に乗ってボクは素直にそう感じた。6代目ポロをベースとしたこの新型GTIは、いわゆるBセグメントのコンパクトカー。日本ではトヨタ ヴィッツRS(いや、GRか)、ホンダ フィットRS、日産 ノートNISMO、スズキ スイフト・スポーツなどが“形式的”には肩を並べる存在だ。

 ただし日本と欧州とでは、ハッチバックの走りのレベルに大きな開きがある。日本ではCセグハッチ(ひとつ上のゴルフクラスだ)そのものが衰退してしまったし、このポロが属するBセグメントも、走りより室内の広さを目指したハイルーフ系が主流となり、シティコミューターとしての利便性が重要視されている。もっと言えば、トールワゴン系軽自動車に押され気味でもある。

 対して欧州では、相変わらずハッチバックが庶民の生活に根ざしており、その利便性以上に走りが磨かれ続けているから、比べてしまえばその差は大きいのだ。

 たとえばポロのボディは屈強だ。それはベースモデルだと1.0リッターの排気量しかないターボエンジン(95ps/175Nm)を積むクルマに、倍の排気量を持つ2.0リッターのターボエンジン(200ps/320Nm)をブチこんでしまうことからもわかる。

 とはいえ、ノーマルに対し特別な補強が施されてはいない。しかし、固められた足まわりと、17インチタイヤを与えるだけで、200psにも達するパワーをバシッと受け止め、思い通りに走らせてしまうシャシー性能を持っているのだ。

 実際ポロGTIを運転すると、そのソリッドな乗り味にちょっと驚く。いや、むしろスペインのマラガで試乗したときは、もっとしっとりと老成した乗り味だったような……ともかく、日本に入ってきたポロGTIの乗り心地は荒削りで、板っぽく、しかしなんとも若々しい。

 路面からのショックはダイレクトに入ってくるが、ボディがしっかりしているおかげで、ショックアブソーバーは短い時間でその衝撃を吸収するし、ハンドルを切れば、思った以上に小さなロールでコーナーを素早く曲がる。クイックだが過敏過ぎない絶妙なさじ加減の操舵応答性には、まるで自分が10歳若いカラダを取り戻したような気分になる。

 エンジンは、ずばり速い! 額面的には200psしかないが、まともに踏んだらとことん速い。同時期に導入したup!  GTIもそうだったが、日本仕様はブーストが上げられているのだろうか? ヨーロッパで試乗したときのようなまったりとトルキーな、口さがなく言えば眠たい感じが払拭されていて、湿式の6速DSG(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載しているにもかかわらず、アクセルに対する反応が素早いのだ。

 ゴロゴロ、と少し安っぽい音をたてるての回転上昇感はあるものの、そのサウンドはカラッと乾いている。モードボタンを「SPORT」に切り替えると、スポーツセレクト付きサスペンションのダンピングが固められ、ブーストがさらに上がる。アクセルオフでは“バラッ、ヴァララッ!”と、小さな点火カットサウンドが聞こえ、ステアリングのパドルを引けば“ヴォフッ!”という重低音とともに、電光石火のシフトアップが、アクセルを踏み続けたままで完了する。

 しかも、今回からこのモード切替スイッチが、コンソールの右側へきちんと移設されたのも素晴らしい。これまではゴルフも含め、これが左側に付いており、ブラインドタッチによるモード変更がとにかくやりづらかったのだ。

 ストローク長はあるのに簡単には縮まないサスペンションは、路面の凹凸を遠慮なく拾う。だから乗り心地は、それほど良くはない。ちなみに、欧州で乗ったポロGTIは、これがプチ・ゴルフGTIと呼べるほどしなやかだったのだが……。また、振動がステアリングシャフトやインパネに共振して、ときおりブーッとビビるあたりも、ゴルフに比べ格段に安っぽい。極めつけは、国産ワークスチューニングカーを真似たような、インパネの赤いカラーリング。これをスポーティと呼ぶのは気恥ずかしい。

 だがしかし、あなたがハッチバックに若さへの憧れを投影しているならば、ゴルフGTIよりポロGTIに乗った方がよい。ゴルフに比べ遮音が効かず、中身がスッカスカな分だけ動きが断然軽やかである。

 この肉食系ハッチバックに乗ると、自然と運転がうまくなるだろう。正確に反応するステアリング。ロールが少なくクルマの動きを的確に伝えるサスペンション。そして右足の期待に応えるエンジンパワー。

 その“じゃじゃ馬”なコンセプトは先代と同じだが、ワイドになったトレッドと伸長したホイールベースによって、そこには高い安定性もくわわった。重心が下がり、サスペンションの接地性が上がったおかげで、XDS(電子制御式デフ)の効きも無理矢理感がなく、付いていることすら意識しなくなった。

 その破綻のない、しかし刺激的な走りに触れ続けることで、きちんとクルマを動かそうと思うようになるはずだ。そして運転することが、どんどん楽しくなる……。そんなハッチバックが、いま日本にどれほどあるだろうか?

 ポロGTIの価格は344.8万円と、Bセグメントのハッチバックとしては存分に高い。しかし、ここまでの完成度を見せつけられると、もはやその価値はBセグメント車の範囲内では推し量れない。ノーマルのポロは庶民のアシだがGTIは別格。ライバルはずばり、ミニ・クーパーSだろう。

 ゴルフGTIがキング・オブ・ハッチバックだという思いは変わらない。しかし、極めてシンプルなクルマの愉しさが欲しい、と思うならば、ボクはポロGTIを選ぶべきだと感じた。大は小を兼ねない。ポロGTIには、ゴルフGTIにはない良さがあるのである。