こんな4WDを誰もが待っていた!!――20年ぶりに生まれ変わった新型ジムニー、発売!

 

 スズキが誇るコンパクトオフローダーと言えば「ジムニー」。日本のみならず世界中で愛される同車が20年ぶりにフルモデルチェンジし、本日より発売となった。ジムニーフリークの1人、渡辺敏史が新型の魅力を伝える。

文・渡辺敏史 写真・望月浩彦

 ジムニーが登場したのは1970年のこと。自動車事業からの撤退を余儀なくされた他メーカーが開発した小型四輪駆動車の製造権をスズキが買い取り、大改良をくわえたことで世にでることとなった。

 社内の反対をおして製造権買い取りの陣頭指揮をとったのは現在の鈴木修会長であり、のちに氏はその買い取りにこだわった理由を「狭い林道を分け入る山間部での業務に役立つと思ったらから」と、語っている。それはまだ“四駆”というカテゴリー自体が無に等しく、自家用に用いられることなどなかった時代の話だ。

 その鈴木会長の決断は、のちにその先見の明をもって社内で氏の評価を高めるのに大いに力あったはずだ。ジムニーは想定通り、林業や電設業など山間部の商用とし重宝されるだけでなく、降雪地では乗用に、若者にはレジャー用にと用途を一般側にも拡大しながら、1981年には2代目、1998年には3代目とフルモデルチェンジを受ける。このあいだ、ライバルメーカーも“打倒ジムニー!”を目論んだモデルを投入したが、その知名度にくわえ、悪路走破力をはじめとする性能面の高評価もあって、挑戦を退けてきた。現在、軽自動車~小型車のカテゴリーにおいて、ジムニーと同格に比較できるモデルはない。

 ほかに代わりがないうえ、日本だけでなくアジアや欧州市場でも同様の熱い支持に支えられるジムニーは、だからフルモデルチェンジともなれば相当な関心を集めることとなる。ましてやその回数は少なく、今回20年ぶりと聞けば、ファンにとってその行事は皆既日食や式年遷宮のように厳かなものですらあるわけだ。

 そしてとうとうあらわれた4代目ジムニー。上を下へのSUV乱れ咲きの現世にあって、新型のデザインはむしろ過去を範とする。丸い灯火類やグリル、バンパーなど各世代のディテールを各部に織り込んだ全体的なその印象は、2代目がいちばん近いだろうか。

 直線的なボディパネルにキリッと立ったフロントウインドウが組み合わさるプロポーションは、皆々が思い描く懐かしい四駆車の姿そのままだ。或いは若い向きにとっては、フラットデザイン的なクールさと重なるのかもしれない。ちなみに四角いキャビンのおかげでルーフ部の幅が広がり、比例してキャリアの有効幅も広がっているという。欧州では狩猟のようなヘビーなレジャーに用いられることも多いと聞けば、そういう些細なユーティリティ向上も有効に活用されるのだろう。

 2代目との共通性は内装のデザインにも反映していて、真四角のメーターナセルやアシストグリップ付きのダッシュボードなど、道具感を前面に押し出した形状となっている。表面積の大半を樹脂が占めるのは、相変わらずのチープさだが、それでもシボの入れ方や表面処理などを丁寧に吟味しており、先代比では確実にクオリティ向上は果たされていた。また、スクエアなフォルムは運転席からの四隅の把握のしやすさや室内の横方向の開放感にも繋がっている。

 シャシーは伝統のラダーフレーム式、サスペンションもコイルばね支持のリジットアクスルを前後に採用……と、新型ジムニーの骨格は先代のそれと同じ構成だ。サスペンションアームの取り付け位置もそのままで、ホイールベースやタイヤサイズもそのまま、と聞けば、先代のキャリーオーバーでは? という話になるだろう。だが、各部は刷新されていて、部位ごとの剛性もしっかり高められている。

 信頼性や耐久性といった必須の性能が、既に実証されている先代の基本設計を継承しながら、各部をアップデートすることで走破性や快適性も高めよう、という今回のモデルチェンジは、派手さこそないが定番で居続けるための常套ともいえるエンジニアリングだ。ちなみに走破性にまつわるスペックに、先代から劣化したところはほとんど見受けられない。

 と、そんな話を聞けば、果たしてジムニーはなぜ20年ぶりの完全刷新を受ける必要があったのか、という疑問にも繋がるかもしれない。この点について開発責任者は「横滑り防止装置などの電子デバイスへの対応にくわえて、歩行者保護やポール側突といった最新の要件はもちろん、想定できる先々を見据えた衝突安全性を織り込んでいくために新規開発は絶対だった」と、言う。

 日本仕様でのジムニーといえば、軽自動車規格モデルがまず思い浮かぶが、輸出向けのジムニーは1.0リッター以上のエンジンを積んだ、日本でいえば登録車に該当するモデルがそれにあたる。そして日本市場において、この登録車版はジムニーシエラという名前で展開されてきた。

 その併売体制は4代目でも変わらずだが、搭載するエンジンは双方ともに最新の環境技術を備えたものに置き換えられた。特にジムニーシエラに搭載する自然吸気の1.5リッター4気筒エンジンは、ASEAN地域で展開する乗用ミニバンなどに向けて開発したもので、日本では初採用となる。先代より拡幅されたトレッドをカバーする大型のオーバーフェンダーを与えられたこちらは、ルックス的には軽自動車版よりも収まりがよい。

 なお、組み合わせるミッションは、ジムニーとジムニーシエラのいずれも5速MTと4速ATで、悪路で威力を発揮するローギアモードを備えた副変速機も採用する。なお、副変速機のコントロールが、先代は電気スイッチ式だったのに対し、操作の手応えがありギアポジションが一瞥できた方がいい、という理由で敢えてアナログな手動レバー式に戻された。

 誰もが気構えなく接することのできる人懐っこさとは裏腹に、然るべき場所では名だたるオフローダーも白旗を掲げる悪路走破性を披露する。このユニークポイントをさらに拡張しながらオンロードでの居心地にも配慮がなされるなど、唯一無二の存在は敵を己としながら確実に成長を遂げた。新型ジムニーはニッサン GT-Rやマツダ ロードスターと同じく、世界での評価が非常に楽しみな1台だ。