おっ、いいじゃん! アルファロメオの新型セダン、ジュリアは想像以上の気持ちよさ

 

 「ありふれた日常、そこから永遠にエスケープする……やがて、鼓動と駆動はひとつに、知性が導く感性の高みへ……」やや意味不明ではあるが、女性の口から歯切れよく語られる耳当たりのいい言葉が軽く心に引っ掛かる、アルファロメオ ジュリアのCM。

アルファロメオ ジュリア スーパー|Alfa Romeo Giulia Super

 ジュリアはもともと1962年、1.3リッターのジュリエッタシリーズに代わるモデルとして生み出された、1.6リッター4気筒を積むアルファロメオで、最初は4ドアセダンのTIが登場、やがてクーペのスプリントGTやスパイダーなど多くのバリエーションが生み出されて、60年代のアルファの中核となったモデルだった。

 去年デビューした新生ジュリアはそのジュリアの名を復活させたクルマだが、ボディサイズは60年代のオリジナルとは比べ物にならないほど大きくなっている。往時のジュリアは4140×1560×1430mm、ホイールベース2510mm、今のジュリアは4635/45/55×1865×1435mm、ホイールベース2820mm。ま、時代の成せる業だろう。

 現在のジュリアのラインナップは、ジュリア、同スーパー、同ヴェローチェ、同クアドリフォリオの4モデルで、前3車が2リッター直4ターボを搭載、最後のクアドリフォリオが3リッターV6ツインターボを積む。駆動方式は基本RWD=後輪駆動だが、ヴェローチェだけはAWD=4WDだ。

 果たして現代のジュリアは、鼓動と駆動がひとつになって、知性が導く感性の高みへと導いてくれるクルマなのか? それを知るべく、去年暮れも押し迫った頃、スーパーとヴェローチェの2台を伊豆のワインディングロードに解き放ってみた!

 最初に乗ったのは200psエンジンと8段ATで後輪を駆動するブルーのジュリアスーパーだが、まずそのインテリアが目を惹いた。特にダッシュボードからコンソールに掛けての造形がちょっと特徴的で、明るい色調の無垢な感じに仕上げられたウッドパネルもいい感じだ。ベージュのシートの身体へのフィット感も上々である。

 走り出してみると、おっ、いいじゃん、という実感。近年のアルファロメオの多くに感じられた、ボディとシャシーがどことなくルーズな感触が完璧に払拭され、剛性感たっぷりなボディの下で、カッチリとした脚が滑らかに動いている感じ。

アルファロメオ ジュリア スーパー|Alfa Romeo Giulia Superインフォテイメントシステムは標準でAppleCarPlay、AndroidAutoに対応

 サスペンションは硬すぎず、柔らかすぎず、したがって乗り心地はなかり良好。それに加えて気に入ったのが、ステアリングの操舵感で、軽めながら充分な路面フィールを伝える上に、作動感が素晴らしくスムーズなことだった。さすが名門アルファロメオ、やればできるじゃないか、という印象である。

 東名を一気に走り抜けて、箱根から伊豆のワインディングロードへ。スロットルを軽く緩めつつ、前記のグッドフィールなステアリングを切り込むと、ノーズが素直に内側を向いて、ジュリアは嬉々としてコーナーに入っていく。

 コーナリングはすこぶる安定したもので、限界近くまで攻めてもほとんどアンダーステアを感じさせず、オンザレール感覚でコーナーを抜けていく。イニシャルのアンダーステアが軽いので、スロットルを閉じた際の姿勢変化も極めて少なく、コントロールしたがりの腕達者には、むしろ物足りなく感じられるかもしれない。

 コーナリングが安定している一因は、パワーユニットにもある。ジュリアスーパーの2リッター直4ターボは200psと33.7kgmを生み出す大人しいチューンだから、シャシーの能力がそれを完全に上回っている印象なのだ。

 それとこの直4ターボ、実用域から充分なトルクを出すのに加えて、8段ATが極めて滑らかに変速することもあって、作動感がとてもスムーズなのも好ましい。ただしその反面、かつてのアルファロメオのエンジンが備えていた官能性という点では、少々物足りないのも事実だ。

 その一方で、まるでフェラーリみたいな、ステアリングコラム固定式の大型パドルを備えているのがアルファらしく、好き者には刺さるポイントのひとつだろう。

 さて、かなりの好印象を得たスーパーから、ホワイトのヴェローチェに乗り移る。シリーズで唯一のAWDモデルであるこれは、エンジンの基本こそスーパーと共通ながら、アウトプットが280psと40.8kgmに跳ね上がっている。

 ヴェローチェはインテリアの印象もスーパーとは少々異なる。ダッシュのトリムがウッドからアルミに替わるほか、サイドサポートの大きく張り出したスポーツシートが標準になる。これは純粋に好みの問題だといえるが、このスポーツシート、左右の張り出しが窮屈な印象があって、僕はスーパーのシートの方が落ち着いた。

 エンジンのパワーアップの効果は歴然で、車重はスーパーの1590kgから1670kgに増えているものの、それもモノともせず、ジュリアボディを力強く引っ張り上げる。だから僕は、この280ps仕様エンジンをスーパーに積んだら愉しいに違いないと、夢想したほどだった。

アルファロメオ ジュリア スーパー|Alfa Romeo Giulia Super

 実はこのヴェローチェの試乗車、北海道を走る必要があったとかで、標準ではないスタッドレスタイヤを履いていた。それでも乗り心地には顕著な違いはなく、これも快適だったが、ステアリングのフィールだけはサマータイヤを履いたスーパーと違って、切り始めの反応が少し甘い印象で、ややザラついた感触も伝えてきた。

 コーナリングはこれも基本的にアンダーステアの軽い、オンザレール感覚に近いものだが、スーパーと比べるとステアリングの切り初めにやや大きめの舵角が必要になる。が、一旦コーナリングを始めてしまうと軌跡が膨らむことなく、切ったとおりに回っていく。切り初めの舵角の大きさには、スタッドレスタイヤが関係している可能性も大いにあるだろう。

 というわけで2台の4気筒ジュリア、想像していた以上に好く出来た、ドライビングの気持ちいいクルマだと実感、アルファロメオというブランドの魅力と実力を大いに見直したのだった。さらにいえば、今のフィアットグループにそれなりの力がある、ということの証のひとつかもしれない。

 今回の2台、スーパーが534万円、ヴェローチェが597万円と、プライスの違いが微妙で、ハイパワーなエンジンが積まれ、駆動系も4WDになるという機能的なプラスから考えると、価格差63万円のヴェローチェはバーゲンのように思える。が、しかし、スーパーでも動力性能的には充分だし、ステアフィールや身のこなしの軽快さという点では、むしろヴェローチェを上回っている。

 というわけで、どっちを選ぶかは買い手の考え方次第だが、当方だったら機能的にも装備的にも必要にして充分なものを備え、しかも身軽なスーパーを選ぶだろう

 いずれにせよ、おそらくこの2台を大きく上回る官能性を備え、鼓動と駆動がひとつになって、知性が導く感性の高みへ導いてくれると思われるV6ツインターボ搭載のクアドリフォリオにも、ぜひ乗ってみたいものだと思っている。