PR

エンタメ エンタメ

【鑑賞眼】新国立劇場「東京ゴッドファーザーズ」 原作アニメへの尽きせぬ敬愛

赤ちゃんを拾った3人のホームレス。右から、ハナちゃん(松岡昌宏)、ギンちゃん(マキタスポーツ)、みゆき(夏子)(引地信彦撮影)
赤ちゃんを拾った3人のホームレス。右から、ハナちゃん(松岡昌宏)、ギンちゃん(マキタスポーツ)、みゆき(夏子)(引地信彦撮影)

 原作となった同名アニメ映画への、深い尊敬と愛情を感じた。

 クリスマスの東京。3人のホームレスは、新宿のゴミだめで捨てられた赤ちゃんを見つける。生みの親を探し歩くうち、3人はそれぞれ、大切な人と奇跡的な再会を果たしていく。

 新国立劇場「人を思うちから」シリーズ第2弾。原作アニメの監督は夭折(ようせつ)した今敏(こんさとし)。上演台本は土屋理敬(みちひろ)、演出は藤田俊太郎。

 人気アニメの舞台化において、ファンが最も気にするのは再現度の高さだ。その点において、非の打ちどころがなかった。

 メインキャラクター3人はビジュアルを含めて、抜群の完成度。とくに主演の松岡昌宏(まさひろ)演じる元ドラァグクイーンのハナちゃんは、セリフの抑揚から身のこなしまで、アニメから飛び出たよう。

 舞台化にあたり、時代設定は2003年から、2020年へ。コロナ禍や渋谷区のホームレス女性撲殺事件などを背景に取り込みつつ、社会からはぐれた彼ら路上生活者の、どうしようもない現実と再生と救いについて、忠実に原作を立体化していく。

 新宿駅から東京タワー近辺、港区の結婚式場から品川区の病院。ロードムービー的な激しい場面転換も、環境音を効果的に使い、観客の想像力をくすぐることで再現。天井からつり下げたゴミ袋の山や、抽象化された小道具や大道具、舞台を分割してエピソードを同時進行する手法も、演劇ならではの仕掛けで楽しい。

 一方で、原作をなぞるあまり、少々駆け足だったことは否めない。3次元の舞台上は、2次元のアニメ画面より情報量が多い。同じテンポでエピソードを詰め込まれると、情報過多になり、物語に浸るというより、流されてしまう。

 とはいえ、原作ファンとしては、心の底から楽しめる作品だった。緊急事態宣言下の厳しい状況のなか、上演がかなったことにも、ある種の奇跡を感じる。

 30日まで、東京都渋谷区の新国立劇場小劇場。問い合わせは同劇場ボックスオフィス、03・5352・9999。(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ