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【鑑賞眼】彩の国さいたま芸術劇場「終わりよければすべてよし」 これが本当の「大団円」

シェイクスピアの全36戯曲を上演する「彩の国シェイクスピアシリーズ」の最終作「「終わりよければすべてよし」(左から、藤原竜也、石原さとみ、吉田鋼太郎)=渡部孝弘撮影
シェイクスピアの全36戯曲を上演する「彩の国シェイクスピアシリーズ」の最終作「「終わりよければすべてよし」(左から、藤原竜也、石原さとみ、吉田鋼太郎)=渡部孝弘撮影
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 タイトルだけみれば、23年に及んだ「彩の国シェイクスピア・シリーズ(シェイクスピア全戯曲上演)」の完結にふさわしい戯曲だ。ところが、そうとも言えないのがシェイクスピアというもの。「ロミオとジュリエット」「マクベス」といった有名作と異なり、この作品の上演機会が少ないのには理由がある。

 若き伯爵、バートラム(藤原竜也)に思いを寄せる美しい娘、ヘレン(石原さとみ)は、亡き父から受け継いだ特効薬で国王(吉田鋼太郎)の病を治す大手柄を挙げ、ほうびにバートラムとの結婚を願う。ところが、バートラムは「貧乏医者の娘を妻にする気はない」と拒否。国王に叱られて渋々承諾するも、初夜を迎えることなく戦地へと旅立ってしまうのである。

 まず、バートラムがなぜそこまでヘレンを拒むのか分からない。そして、ヘレンは驚くべき行動力で、バートラムが恋したダイアナ(山谷花純)と入れ替わり“初夜”をもぎ取る。ラストでは改心したバートラムが、ヘレンに「許してくれ」と全面降伏。あれほど拒否していたのに、「いつまでも彼女を愛します」と突っ込みどころ満載の“心変わり”を見せる。収まるべきところに収まる「終わりよければすべてよし」のラストだが、しっくりこない観客がいても不思議ではない。喜劇でありながら、これは明らかに「問題作」である。

 故蜷川幸雄からシリーズの演出を引き継いだ吉田は、この問題作を「絶対的なハッピーエンド」と解釈した。同シリーズと並行して行われてきた松岡和子の翻訳の力も大きい。難解なせりふをかみ砕き、舞台の上から届けるにふさわしい言葉遣いを選ぶ。「今回ほど女の私が翻訳してよかったと思った作品もない」(公演パンフレットより)と松岡が語った通り、ヘレン、ダイアナ、バートラムの母でヘレンの理解者、ルシヨン伯爵夫人(宮本裕子)といった女性たちの描き方が魅力的だ。

 そして、ヘレンから強烈な愛情を向けられるバートラムの男ぶりがいい。「私を私の思いどおりの男にしてくれ」と出陣していく姿には、ほれぼれするばかり。蜷川に鍛えられ世に出た藤原が、シリーズ最終作で堂々と中心に立っている。その存在感は、蜷川の遺産そのものだ。

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