PR

エンタメ エンタメ

【鑑賞眼】新国立劇場バレエ団「コッペリア」ライブ配信 若さとは無神経なもの 老いとは孤独なもの

コッペリア(人形)に魂が入ったと確信するコッペリウス(中島駿野)と、コッペリアに扮するスワニルダ(米沢唯)=瀬戸秀美撮影
コッペリア(人形)に魂が入ったと確信するコッペリウス(中島駿野)と、コッペリアに扮するスワニルダ(米沢唯)=瀬戸秀美撮影
その他の写真を見る(1/2枚)

 わが世の春を謳歌(おうか)する若者の無神経さと、省みられることがない老人の孤独。

 コッペリアを人形と知らず夢中になる青年フランツ、その恋人スワニルダ、そして老人形師コッペリウスの悲喜劇にはさまざまなバージョンが存在する。

 今回上演されたのは、ローラン・プティ(1924年~2011年)の振り付け。プティの手にかかれば、作品の舞台がポーランドの片田舎からフランスの都会に、偏屈で粗野な老職人がエレガントな老紳士に、牧歌的な結末がほろ苦いものに変わる。変わらないのは若者たちの無軌道な奔放さだ。

 2日の公演ではフランツを井澤駿(いざわ・しゅん)、スワニルダを米沢唯(よねざわ・ゆい)、コッペリウスを中島駿野(なかじま・しゅんや)が演じた。

 一幕は、窓辺のコッペリアにうつつを抜かすフランツと、嫉妬するスワニルダ。恋人と踊りながら、別の女へ愛をアピールするフランツは不実な男だが、端正な井澤が演じるとどこか真っすぐで、情熱的。一生懸命、彼の気をひこうとする米沢のスワニルダはみずみずしく、いじらしい。

 二幕は、コッペリウスの家に忍び込んだスワニルダがコッペリアに成りすます。実はコッペリア、スワニルダに恋したコッペリウスが彼女に似せて作った自動人形だった、というのがプティ版のあらすじ。

最後、1人舞台上に残され、壊れたコッペリア(人形)を前に絶望するコッペリウス(中島駿野)=瀬戸秀美撮影
最後、1人舞台上に残され、壊れたコッペリア(人形)を前に絶望するコッペリウス(中島駿野)=瀬戸秀美撮影
その他の写真を見る(2/2枚)

 人形相手に愛を語らい、ワルツを踊る中島のコッペリウスは、瀟洒(しょうしゃ)で完璧な紳士だからこそ、異常性も感じる。コッペリアにふんした米沢のスワニルダは、小悪魔的な魅力で彼を手玉に取り、翻弄していく。

 最終盤、フランツとスワニルダは結ばれ、街の広場で大勢から祝福される。そこに壊れた人形を抱えたコッペリウスが現れる。大団円の若い恋人たちのそばで、ひそやかな老いらくの恋が破壊され、無残な姿をさらしている残酷さ。井澤と米沢ペアが見事に踊れば踊るほど、中島コッペリウスの悲哀が際立つ。

 緊急事態宣言により、全公演が中止となった。そのため急遽(きゅうきょ)、全4キャストの公演を無観客で上演し、無料ライブ配信に踏み切ったという。毎公演3~5万人が視聴しており、回を重ねるごとに増えている。

 2、4、5、8日の午後2時から、新国立劇場Youtubeと同バレエ団Facebookにて公開。(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ