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【鑑賞眼】「アップデイトダンスNo.82『春』変奏曲-宮沢賢治-」 宇宙とつながるダンス

勅使川原三郎による詩篇「春と修羅」の言葉が散乱するダンス(c)KARAS
勅使川原三郎による詩篇「春と修羅」の言葉が散乱するダンス(c)KARAS

 ある人が言っていた。「荻窪のビルの地下は、宇宙につながっている」と。

 愛知県芸術劇場(名古屋市)の初代芸術監督で世界的ダンサー、振付家の勅使川原三郎と、愛弟子の佐東利穂子による定期公演。「アップデイトダンス シリーズ」として、東京都杉並区荻窪にある創作スペース「カラス・アパラタス」の地下で、毎月のように作品を発表し続けている。

 今月は宮沢賢治の詩編「春と修羅」に乗せて、鮮烈な生命力を感じるコンテンポラリー・ダンスが上演された。演出、照明、音楽構成は勅使川原。

 明かりがついて、勅使川原の禿頭がぼんやりと浮かび上がる。顔はうつむき、両手を下ろし、怒りを耐えているように震え、一度正拳突きのような動きを見せたかと思うと、また両手を下ろす。録音された佐東の声が詩を無機的に読み上げる。

 舞台装置は照明だけ。ダンスと連動して暗転と変調を繰り返す。春先の強い風の音とともに、佐東が舞う。手を伸ばし、体を翻し、風に散るように、草木が芽吹くように。かかとをつけないのは、まだ地面が雪解け水の冷たさをたたえているからだろう、と夢想を呼び起こす。

 抽象的な表現が続くかと思えば、ある生徒たちの春の一幕である表題の「『春』変奏曲」が読み上げられた際には、佐東が笑いが止まらない女学生を、勅使川原がその原因である星葉木の胞子を発見する楽長を演じた。しかし、ふと気付くとまた次の春のダンスが始まっている。

 強烈な光と影のコントラストを生み出す照明のせいか、断片的に流れる音楽のせいか、とらえどころのないエネルギーを感じる動きのせいか。確かにステージ上の2人のダンサーを見ているはずなのに、客体と主体の境目が曖昧になっていき、次第に精神と肉体が分離して宇宙に浮かんでいるような気持ちになった。

 4月8日~11日、17日~20日。次回公演は「不眠症の月」として、4月30日~。東京都杉並区荻窪のカラス・アパラタスB2ホール(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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