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【鑑賞眼】ミュージカル「ポーの一族」 深まった耽美的世界

エドガー(明日海りお、左)とアラン(千葉雄大)は、宿命的な出会いを果たす(岸隆子撮影)
エドガー(明日海りお、左)とアラン(千葉雄大)は、宿命的な出会いを果たす(岸隆子撮影)
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 宝塚歌劇団の元花組トップスター、明日海(あすみ)りおが退団後、初主演中のミュージカル。明日海が宝塚在団中の2018年に主演し、代表作になった作品でもある。原作漫画を忠実に再現した宝塚版が美し過ぎただけに、「男優が交じって成立するのか…」と危うんだが、宝塚版から引き続き脚本・演出を担った小池修一郎のこだわりの配役と、ゴシック調の豪華な美術(松井るみ)で、作品の耽美度と重厚さはむしろアップ。やはり「美し過ぎる」舞台だった。

 萩尾望都(もと)が1972年に発表した原作漫画は、少女漫画の歴史に残る伝説的作品。美少年エドガー(明日海)が、永遠に年を取らずに生き続けるバンパネラ(吸血鬼)一族に加わる物語だ。今回も大好評だった宝塚版を基本に、原作漫画の台詞(せりふ)をふんだんに盛り込んだ脚本と音楽(太田健)を生かしつつ、美術や振り付け、衣装を一新。エドガーの妹メリーベル(綺咲愛里=きさき・あいり)が歌う新曲も加わった。

 3年を経ても、金髪碧眼(へきがん)のメークを施した明日海が登場しただけで、まぶしいほどの美しさ。バラに囲まれた城に暮らすバンパネラ一族、美少年のまま永遠の命を生きるエドガー、というファンタジーも、この外見で説得力を持つ。さらに男優が入ったことで芝居にリアルさが増し、エドガーの孤独感が強調された印象だ。

 人間からエナジィ(血)を得なければ生きられず、永遠の命ゆえに別れを味わい続ける過酷な宿命を、明日海が陰影ある演技で表現。煩悶(はんもん)する姿を“エドガーの影”という男性ダンサーたちが囲み、シャープな踊りで内面を表現するのも効果的だ。

 「ポー」は原作ファンだった小池が長年、温め続けてきた題材。宝塚版に続き、今回も満を持しての上演だけに、豪華な配役が楽しい。エドガーの友人アラン役の千葉雄大は、映像ではおなじみだが、ミュージカルは初出演。金髪も似合い、明日海と並んでも違和感がない。裕福ながら満たされぬ少年の屈折を繊細に演じた。エドガーの母親代わりのシーラ役の夢咲ねね、メリーベル役の綺咲も可憐(かれん)。そして涼風真世が妖しい占術師役など2役で、圧倒的な存在感を見せた。

 男優陣も実力派が勢ぞろい。福井晶一や小西遼生らミュージカルの主演級が周りを固め、舞台の完成度を上げる。初ミュージカルの歌舞伎俳優、中村橋之助も色男の医者を軽妙に演じた。男優が入って合唱の厚みも増し、新たな「ポー」として成功している。

エドガー(明日海りお、中央)はバンパネラ一族に加わる(岸隆子撮影)
エドガー(明日海りお、中央)はバンパネラ一族に加わる(岸隆子撮影)
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 社会から異端者として排斥され、流浪の運命を生きなければならないバンパネラの悲しみは、今日的なテーマで、古びることはない。小池が潤色・演出を手掛けた名作ミュージカル「エリザベート」のように、定期的な上演を望みたいが、配役が最大のハードルか。

 2月17日まで、有楽町・東京国際フォーラム。23~28日、名古屋・御園座。28日、有料ライブ配信を行うほか、全国60館の映画館と台湾・香港の映画館でもライブ・ビューイングを行う。(飯塚友子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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