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【鑑賞眼】トム・プロジェクト「モンテンルパ」 戦犯帰還に奔走した人々の足跡伝える

戦後もフィリピン・モンテンルパに収容された戦犯の帰還のため、歌手の渡辺はま子(島田歌穂)と教誨師の加賀尾秀忍(大和田獏)は奔走する(ノザワトシアキ撮影)
戦後もフィリピン・モンテンルパに収容された戦犯の帰還のため、歌手の渡辺はま子(島田歌穂)と教誨師の加賀尾秀忍(大和田獏)は奔走する(ノザワトシアキ撮影)

 コロナ禍でたった1週間、客席を半分に絞って上演されたシライケイタ作・演出の新作。だが、限られた観客だけの作品にしてはいけない、好舞台だ。

 終戦後もフィリピン・モンテンルパに収容され続けた戦犯が作詞、作曲した「あゝモンテンルパの夜は更けて」(1952年)。歌手、渡辺はま子らが大ヒットさせ、百人超のB、C級戦犯の存在を日本に知らしめ、帰還を求める世論を喚起した、史実に基づく舞台だ。渡辺をヒロインにした作品は過去、テレビドラマや舞台にもなったが、今作は現地刑務所で戦犯に寄り添い、助命嘆願に奔走した実在の教誨(きょうかい)師、加賀尾秀忍(かがお・しゅうにん=大和田獏)を、渡辺(島田歌穂)と並ぶ主役に据えた。それぞれの偉業を美談仕立てではなく、迷いも葛藤も抱えながら行動せずにはいられなかった市井の人間として描き、むしろ胸打たれる。

 戦時中は大陸で慰問をしていた渡辺が終戦後、モンテンルパに収容され続けている戦犯の存在を知る。現地には教誨師の僧侶、加賀尾が戦犯を支えるが、明らかな冤罪(えんざい)で死刑判決を受けた人も数多く含まれている。加賀尾が14人の死刑執行に立ち会う場面は、涙なしには見られない。

 「なぜ私たちが死ななければならないのですか」-。死刑囚の切実な訴えを受け止め、加賀尾は任期後も現地に無給で留まることを選び、ローマ法王を始め、あらゆる方面へ、嘆願書を書き続ける。さらに極限状態にある戦犯らに創作を促し、「あゝモンテンルパの夜は更けて」の歌詞と楽譜が渡辺の手元に送られるのは、史実通りだ。

 舞台のクライマックスは、「あゝ-」を日本で大ヒットさせ、戦犯帰還の世論を喚起した渡辺が、国交のなかった現地にやっとの思いで赴き、戦犯らの前で歌う場面。「みなさんを慰めに来たのではなく、ただ歌いに来た」と、身を削るように歌う島田の歌声が、しみじみと心に響いた。そしてこの歌のオルゴールを持参した加賀尾と面会したキリノ大統領(当時)は1958年、108人の戦犯全員に特赦を与え、帰国が実現する。

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