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【鑑賞眼】東京バレエ団「ニューイヤー祝祭ガラ」 上野水香の祈りのボレロ

ベジャールの代表作「ボレロ」を踊る上野水香(c)Shoko Matsuhashi
ベジャールの代表作「ボレロ」を踊る上野水香(c)Shoko Matsuhashi
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 東京に緊急事態宣言が発令された翌日、たった1日だけ行われた奇跡のような公演。上演か、中止か。ギリギリの選択だったと思うが、そもそもの公演テーマが「不安な時代にエールを贈る、“元気が出るバレエ・ガラ”!」。なお世界に暗雲広がる2021年、何が何でも客席に舞台芸術とパワーを送ろうとする、このバレエ団の意地を見た。

 20世紀のバレエ名作を軸に、華やかな演目が並ぶ構成。冒頭からジョージ・バランシン(1904~83年)振り付けの「セレナーデ」で、群舞の一糸乱れぬ腕の動きに目を奪われる。沖香菜子ら主演級はもちろん、今作だけで女性ダンサーの層の厚さと技術力が伝わる。女性ダンサーを美しく見せる、秋元康臣の巧みなパートナーリングもさすがで、チャイコフスキーの弦楽セレナーデの生オーケストラ演奏とも相まって、陶然とさせられた。

 続く「ディアナとアクテオン」(涌田美紀、池本祥真)、「タリスマン」(秋山瑛、宮川新大)、「ドン・キホーテ」(伝田陽美、柄本弾)では、主演級男性ダンサーと、抜擢(ばってき)された女性ダンサーの組み合わせが面白く、斉藤友佳理芸術監督の期待の大きさを感じた。伝田のキトリは、いつでも主演できそうな完成度だ。

主演の上野水香(中央)は、ベジャール本人から指導を受け、日本人女性で唯一「ボレロ」が踊れる(c)Shoko Matsuhashi
主演の上野水香(中央)は、ベジャール本人から指導を受け、日本人女性で唯一「ボレロ」が踊れる(c)Shoko Matsuhashi
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 そして圧巻は、上野水香主演「ボレロ」。高松宮殿下記念世界文化賞受賞者でもある仏振付家、モーリス・ベジャール(1927~2007年)の代表作にして、現代バレエの象徴的作品だ。上野は日本人女性で唯一、ボレロを踊る事を許され、ベジャールから直接指導も受け、これまで国内外、野外でも踊り続けてきた。

 今回、ダンサーとして円熟期に入った上野が、何度も踊ってきたこの作品と音楽に身を委ね、鼓動のようなリズムを全身で刻み続ける姿は、巫女(みこ)のようだった。15分間で静(せい)から動へ。神がかり的なパワーが深紅の円卓上で激しく踊る上野に宿り、それが周囲の男性ダンサーへ、さらに客席まで広がり、劇場全体が祈りの空間と化して一体となる、不思議な高揚感を味わった。ラヴェルの有名過ぎる楽曲で、音を外したオケの演奏だけが惜しい。

 何度も繰り返されたカーテンコール。闇の中でこそ一層、力強い光を放つ舞台芸術への称賛の拍手だった。1月9日、上野の東京文化会館。(飯塚友子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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