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女優・大空ゆうひ「17歳の主人公のピュアな言葉に強く惹かれました」 日本初演の戯曲版『キオスク』出演

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 オーストリアの人気作家ローベルト・ゼーターラーによるベストセラー小説「キオスク」を、作者本人が戯曲化し、ウィーンで初演された舞台が2021年1月22日から日本初演される。19年12月~20年1月に石丸さち子の上演台本・演出でリーディング版として日本初上演された公演は大好評を博し、今回は待望の戯曲版(石丸さち子演出)で、兵庫・東京・静岡・愛知・広島と巡演する。

 ウィーンのキオスク(タバコ店)で働くことになった17歳のフランツ(演:林翔太)が、さまざまな大人たちとの交流や初恋を通じた波乱の成長と共に、政治や世情と向き合う姿まで描かれる。1937年ナチスドイツが台頭してヒトラーによるホロコーストが始まり、人種差別が横行するオーストリアで多感な時期を過ごすフランツの切なくも純粋な青春と、私たちが生きる現代への警鐘に心が突き動かされる衝撃の感動作だ。

 フランツが出会う大人たちを演じる実力派揃いのキャストに名を連ねるのが大空ゆうひさん。舞台『キオスク』にさまざまな役柄で出演する大空さんは、元宝塚歌劇団トップスターで退団後は秀作舞台に数多く出演し高い評価を得ている。本作品の魅力や女優として舞台に立ち続ける思いなどを伺った。

-最初に台本を読まれた感想を教えてください。

 詩的で不思議な世界観がベースになっている物語の奥に、 “強い生命力”があるなと感じました。主人公が生きる時代は厳しい状況下だけれども、それに負けないくらいの美しい描写が輝いているような印象です。そういう不思議なバランスのようなものが魅力的な作品だなと、この世界に生きてみたいなと思いました。

 17歳の純朴な少年が、さまざまな大人との出会いを通して葛藤し成長して行く過程が鮮烈で、彼の言葉に強く惹かれました。お母さんとの葉書(手紙)のやりとりもとても素敵です。私自身の17歳というと、ちょうど宝塚歌劇団で初舞台を踏んでいた頃ですね(笑)。ボーっとしていましたけれど(笑)。それと比べるとフランツはなんと過酷な青春を送っていることか…。17歳はまだ非常に脆い存在ですよね。エネルギーはあるんですけれど、傷つきやすいし自分の扱い方がわからない。フランツや母親の葉書の文章も大人との会話も、語り過ぎていないところが好きです。キオスクの店主トゥルスニエク(演:橋本さとし)さんは、あまり彼に多くを語りませんが、その言葉には“生きる”力強さが内包されているのを感じました。

-不安な世情の時代を生きる人物を演じられることもあった大空さんが思うこの時代を、どう感じていますか? またそういう時代背景の作品を演じる上で特に心掛けていらっしゃることは?

 作品に関わる年齢、状況によって感じることは違ってくるでしょうね。若い頃は、演じるためにいくら資料を見ても、やはり実感より情報としてインプットされてる部分が多かったかもしれない。いろいろな舞台を通して経験したことに加えて、今は日々生きていて何が起こるかわからない時代でもありますので、若い頃に比べてより表現できるものがあるかなと考えています。そして、災厄にみまわれている今こそ、この作品を上演する意味も大きいのではないかと思います。

 また、こういう時代背景の作品に出演する時は、いつも以上にしっかりと自分自身がその時代のことを知り理解することが大切だと思っています。自分が生きていない時代の作品を演じる時は、国によっても微妙に違ってきたりしますので、何か見落としていないかと・・・。その時代の映像作品を見ることは、演じる上での何かヒントが欲しいなという意味もありますね。

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-今回演じられる上で、どんなプランをお持ちでしょうか?

 劇中さまざまな役を演じさせていただく私たちが、フランツが出会う状況や時代というものを表現していって、時代のにおいや空気感を作っていけたらいいかなと思っています。あとはいろいろな役で舞台で生きられることって、そうあることじゃないので、演出の石丸さんと一緒にいろいろ探りつつも、「あの役も大空さんだったの?」と意外性のある感じにできたらと。私自身が楽しめるところくらいまでにいけたらいいなと思います。

 私は元の顔が薄いので(笑)。でも今回は、それを強みに変えて、本当にいろいろな顔になりたいなと思っています。作品の一部となり、いろいろな顔に変化することを自分の中で楽しめたらと思います。

-演出の石丸さち子さんとは2度目になります。

 とにかく石丸さんはパワフルな方なんです。その熱量に自分も触発されます。そしてパワフルな部分と、演技やセリフに対して繊細に見てくださる部分もお持ちなので、私は全面的に信頼させていただいています。今回は、私にとってチャレンジする部分が大きいと思いますので、そこは食らいついていきたいです。

 私たち俳優の仕事は一期一会。どんな現場に行っても毎回、本当に勉強になりますね。そして俳優として持ち帰るものがある。今回は持って帰るだけではなくて、自分もちゃんと何かを置いてくることができる役者でありたいと思っています。

-共演者の方は皆さん初めての方ですね。

 そうなんです、今回はほとんど初めての方ばかり。フランツの母親役を演じられる一路真輝さんは宝塚の大先輩。私の初舞台が、当時一路さんがスターで活躍されていた雪組の公演(『この恋は雲の涯まで』)でしたが、たぶん初舞台生のことは覚えていらっしゃらないかと(笑)。宝塚を退団してからお芝居でご一緒するのは初めてですが、その背中を見て学びたいと思います。

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-コロナ禍で、大空さんの出演予定だった舞台も中止になるなど、エンターテインメント界も大変な時代です。今、改めて思う舞台への思いなどをお聞かせください。

 それこそ15歳から舞台に関わってきて、たまに映像のお仕事もさせていただきますけれど、舞台以外のことをあまりしたことがないんです。だから、たぶんそこが、自分にとっていちばん呼吸がしやすい場所なんだと思うんですね。むしろ日常よりも、舞台で誰かを生きている時の方が生きている感じがするというか…。日常は結構ぼんやりしていますね、私(笑)。もうちょっとしっかりしたらいいんですけれど。やっぱり舞台の上が好きなんですね。

 そういう思いは、コロナ禍を通じて特に強く感じました。出演するはずの舞台が2作品ほど中止になって、ずっと何もできなかった時間が終わり、ようやく舞台に出演できた時は、とても幸せを感じました。同時に感謝も。それまでは、何の疑問も持たずにあたりまえのように舞台に立っていたんです。一度舞台と距離を置いたことで、お芝居というのはこんなにも楽しいものだったんだと改めて思いました。舞台で生きられて、お客様にそれを観ていただけるということが、こんなにも幸せなことだったんだなと。ちょっと見えなくなっていたものが見えてすっきりした感じ。巧く言えませんが、一度故郷を離れて久しぶりに帰ったら、その素晴らしさが見えたような感じです。

-最後に、観に来てくださるお客様へメッセージをお願いします。

 不安な気持ちになることの多い日々ですが、人間らしい心は見失いたくない。帰り道に少し暖かくなったり、勇気がでたり、そんな舞台になったらいいなぁと思っています。ナチスドイツが台頭する暗い時代がテーマですが、ナイーブで純粋な輝きと、“生きること”への強いメッセージを感じていただけたらうれしいです。

PROFILE 大空 ゆうひ(おおぞら ゆうひ)
6月22日生まれ、東京都出身。宝塚歌劇団宙組トップスターとして数々の話題作に出演。2012年『華やかなりし日々/クライマックス-Cry-Max-』で同歌劇団を退団。以降、舞台を中心に活躍中。近年の主な出演作に、映画『カイジ ファイナルゲーム』(20)、ドラマ『家政夫のミタゾノ』(20)、コンサート『sound theaterⅩ-Ⅰ』(20)、舞台『銀河鉄道の父』、朗読劇『日の名残り』(いずれも20)、『鎌塚氏、舞い散る』(19)、『陰陽師 安倍晴明~清明 隠された謎…~』(19・18)、『まさに世界の終わり』(18)などがある。

『キオスク』
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
会期:2月11日(木・祝)~21日(日)
兵庫・東京・静岡・愛知・広島 巡演

チケット発売中⇒詳しくはオフィシャルサイトへ

提供:フジテレビジョン

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