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【鑑賞眼】日本舞踊Neo「地水火風空 そして、踊」 天下泰平祈る令和の三番叟

「地水火風空 そして、踊」より。若い舞踊家たちが躍動する(日本舞踊協会提供)
「地水火風空 そして、踊」より。若い舞踊家たちが躍動する(日本舞踊協会提供)
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 攻めに攻めた、日本舞踊の映像作品が誕生した。

 若手舞踊家たちが劇場空間を飛び出し、オールロケで自然と対峙(たいじ)し、戯れ、一体となって踊りまくる。闇夜の松明(たいまつ)に照らされた岩舞台、高知のエメラルドブルーの清流、大海原に昇る朝日を背景にした野外能舞台…。その圧倒的な自然美の中で、無心に踊る男女らの動きは、自然や神に対する奉納であり、祈りだ。それはコロナ禍を鎮め、天下泰平を祈る“令和の三番叟(さんばそう)”にも見え、踊りの誕生する原点を想起させた。尾上菊之丞(おのえ・きくのじょう)作・演出。

 日本舞踊協会初の映像配信作品。コロナ禍で発表の場を奪われた舞踊家の危機感が、流派を超え結束を生んだ。全体は標題の通り、宇宙を構成する「五大」(地、水、火、風、空)を、踊りで表現する構成。

「地水火風空 そして、踊」より。雨乞いの乙女、天女で主演した藤間爽子(日本舞踊協会)
「地水火風空 そして、踊」より。雨乞いの乙女、天女で主演した藤間爽子(日本舞踊協会)
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 冒頭、歌舞伎俳優の松本白鸚(はくおう)が祭司として登場し、深夜の東京・乃木神社で厳かに祈りをささげる。それに応えるように、男女計19人の舞踊家が登場。夜の岩舞台を松明が照らす中、僧の祈りの踊りに炎(火)が揺れ、スモークで可視化された「風」が、色鮮やかな衣装に身を包んだ雨乞いの乙女たちの袖をなびかせる。

 個人的に面白かったのは、「地」の場面。白洲のような砂地で、田植え踊りの男たちが、手拍子や鼓などの打楽器に乗って飛び跳ね、リズミカルに大地を踏みしめる。五穀豊穣(ほうじょう)を祈る若い舞踊家ならではの躍動感が新鮮。続く男女ペアの踊りもユーモラスで、子孫繁栄を願う日本の祭りを連想させた。振り付けは花柳昌太朗、花柳大日翠(はなやぎ・おおひすい)。

 気鋭の舞踊家たちの軸になったのが亡き舞踊家、藤間紫の孫で、女優でもある藤間爽子(さわこ)。雨乞いの乙女として登場し、清流で清められ、やがて天女となって舞う。独特の透明感が美しく、動きが祈りとなって、昇天していく。

 通常、舞踊家は全身で詞章や物語を表現するが、今作は映像作品ならではの手法を貪欲に取り入れ、斬新だ。カメラワークが映画的で、神経の行き届いた動きをする指先や足先をクローズアップし、象徴的に見せたほか、ドローンを使った上空からのカットなど、日本舞踊を新たな視点で見せる。とかく保守的なイメージのある世界だが、こうして若手舞踊家に映像作品を任せ、日本舞踊の多様な表現を約50分の映像に凝縮したのは画期的だ。

 2020年は、歌舞伎界で松本幸四郎が「図夢(ずうむ)歌舞伎」をシリーズ化するなど、伝統芸能が「映像配信」に大きくかじを切った1年だった。災いを、新たな表現に転じる若い情熱は、日本舞踊の世界でも燃えている。

 「PIA LIVE STREAM」で15日午後11時59分まで、配信中。料金3500円。(飯塚友子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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