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【鑑賞眼】白石加代子「百物語」 奇妙に優しくて不安な世界

「箪笥」を読み上げ、演じる白石加代子(Ari.M撮影)
「箪笥」を読み上げ、演じる白石加代子(Ari.M撮影)

 明かりを落とした劇場で、暗闇の中から声が聞こえる。「ちょうちんが割れた話」(夢枕獏作)を語る声は客席の前方を左に右に漂う。話の結末、パッと明かりがついたとき、舞台上に白石加代子が現れた。

 “怖い”小説を、白石が朗読する舞台シリーズ「百物語」(構成・演出、鴨下信一)。平成4年の第一夜から22年をかけて99話を話し終えた。今回はシリーズの代表作を再び上演するアンコール企画の第3弾。第一夜をなぞる演目に「おさる日記」(和田誠作)を付け加えて再演した。

 2話目は「如菩薩団」(筒井康隆作)。つつましい団地住まいの主婦たちは、セレブを標的にした強盗殺人団だったという、おぞましい物語。喫茶店でコーヒーカップを持つ手、吊革をつかんで電車の外を眺めるたたずまい、セレブ妻の首を掻っ切って吹き出す血。身体や表情で余すことなく表現し、読み上げの緩急や調子の変化で小説の辛辣(しんらつ)なユーモアを浮き彫りにする。

 3話目は「箪笥(たんす)」(半村良作)。両親と妻と8人の子供と暮らす男。次々と自分以外の家族が、箪笥に上って朝まで座るようになり、気味の悪さに耐えられなくなったとき、男は逃げるが…。語り手の老女らしく、座布団の上にちょこんと座り、背中を丸めて首を前に出す。どこか懐かしい能登弁で語られる物語は、文字を追うよりも生々しい。

 最後が「おさる日記」。お父さんからのおみやげの子猿は、だんだん人間らしくなっていく…。小学生の無邪気な“ぼく”の日記を読み上げる元気な声に、冷静なようで内心はパニックなのではないかとうかがわせる“お母さん”のとぼけた返事がアクセント。観客席からは大きな笑いが起きた。

 朗読されることにより、自分1人だけで文章をなぞるのとは違った、思いもよらない風景を見ることができる。奇妙に優しい語り口が、足元に大きな穴が空いているような不安を呼び起こす。

 昨年12月28~29日、東京都渋谷区の紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA。(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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