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【岩田由記夫の音楽の明日】スプリングスティーン、ポスト・コロナへの希望

ブルース・スプリングスティーンの新作「レター・トゥ・ユー」 
ブルース・スプリングスティーンの新作「レター・トゥ・ユー」 

 前作からわずか1年という短いインターバルでリリースされたブルース・スプリングスティーンの新作「レター・トゥ・ユー」。英国など全世界11カ国で初登場ナンバーワン、母国の米国では初登場2位。ここ日本でも、J-POP勢に交じって初登場4位だった。

 特徴的なのは、配信が音楽を聴く中心になっている米国などでも、CD、LPと「物理メディア」の売り上げの比率が高いことだ。これは、形あるものでスプリングスティーンを本当に自分のものにしておきたいというファン心理からだろう。

 レコーディングは1973年のデビュー以来、逝去によって欠けたメンバーはいるものの、不動のバック・バンドと呼べるEストリート・バンドと行われた。スタジオはニュージャージー州にある彼の自宅が使われた。レコーディング期間は、わずか5日間。実質的には4日間で全てのレコーディングを終え、5日目は参加メンバー全員で試聴したと言う。

 レコーディングは、オーバーダビング(後で楽器やボーカルを加えること)なしの一発録音だった。これは、原初のロックのレコーディングを踏襲している。ほぼライブと呼べる、現在では珍しいスタイルだ。 

 全12曲中3曲が、スプリングスティーンが20代だった70年代初期の伝説の未発表曲で、残りはコロナ禍の中で書かれている。

 内容はタイトル通り、スプリングスティーンから全世界の音楽ファンに向けたロックによる手紙だ。そこにはポスト・コロナに向けての夢や希望が、愛が歌われている。 

 「ボーン・トゥ・ラン ブルース・スプリングスティーン自伝」(早川書房)でも明らかにしたように、彼自身は長年鬱病に悩まされ現在も投薬治療を受けている。そんな中で、これだけ愛ある傑作を作り上げるのは、彼の愛と真実に対する執念、ファンへの思いがあるからだろう。

 ポスト・コロナに彼の描く世界が実現することを、ただ、ただ願うばかりだ。(音楽評論家)

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