PR

エンタメ エンタメ

【漫画漫遊】「人の息子」あのあやの著 講談社 「赤の他人」と家族になる

(c)あのあやの/講談社
(c)あのあやの/講談社

 端的だが心に残るタイトルである。「赤の他人」と一緒に暮らせるのか。「家族」になれるのか-。里親と里子の絆を描く本書は、答えのないこの問いかけに真摯(しんし)に向き合った作品だ。

 主人公は30代独身の男性漫画家、旭(あさひ)。物語の冒頭は、小学2年生の高嶺(たかね)からファンレターが届く場面だ。実はこの少年、旭が保育士をしていた3年前の大雪の日、実の母親から置き去りにされかけた過去を持つ。旭はこの時の情景が忘れられず、漫画のモチーフとして描く。結果としてそれが再会のきっかけとなる。

 本当は母親と暮らしたい高嶺。だが、諸事情でそれはかなわない。「だったら俺が高嶺くんの里親になれませんか?」。交流を深めるうち、旭には「里親になる」という選択肢が芽生える。普段わがままを言わない高嶺からも「ずっと一緒にいたいな」と言われ、決意を固める旭。気ままで自堕落な生活習慣が改善し、頼りがいも生まれていく。

 ただし、そう簡単に物事が進むわけがない。里親は養子縁組とは異なり法的な親子関係ではなく、あくまで一時的な存在。認定研修など多くの手続きや、何よりそれまでの生き方を根本から変えざるを得ない“覚悟”が必要なのだ。児童福祉司の女性からはキツいことを言われ、仙台に住む旭の母親も猛反対。みな単純な敵ではなく、もっともな正論ばかりなのが余計につらいところ。独身男性が子供を育てる漫画といえば『うさぎドロップ』(宇仁田ゆみ著)を思い出すが、本作はよりリアルな制度面に重点を置いた印象だ。

 受験もそうだが、くぐりぬけた試験の後がむしろ本番である。高嶺が今まで「いい子」だったのは、無邪気な子供ではいられなかった環境で育ったからだ。関係性が変わることで、2人は早速ぎこちなくなり、お互い何を考えているのかが分からなくなってしまう。2人は「家族」になれるのか…。

 家族のありように揺らぎがみえる昨今。だからこそというべきか、血のつながりがない2人が「家族」になろうと努力する姿が、逆に新鮮に映る。折しも10月は、国が里親制度を啓発する「里親月間」。厳しくも温かなまなざしに満ちた作品だ。既刊2巻。(本間英士)

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ