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【鑑賞眼】劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」 壊れたコンビの再生の物語

両親を亡くし、無気力になっていたベン(左、田辺真也)は壊れかけたロボット、タングに出会って修理の旅に出る(阿部章仁撮影)
両親を亡くし、無気力になっていたベン(左、田辺真也)は壊れかけたロボット、タングに出会って修理の旅に出る(阿部章仁撮影)

 両親を不慮の事故で亡くし、無気力に暮らすニートの男と、壊れかけたロボットの再生の物語。いわば「ダメダメコンビ」が主役で、華やかなミュージカルの世界では珍しい題材だが、漢方薬のように後からじわじわと胸を温める舞台だ。劇団四季による16年ぶりの新作オリジナル・ミュージカル。長田育恵台本・作詞。小山ゆうな演出。

 英国の同名小説が原作。アンドロイドが家事や仕事をこなす近未来、自宅に引きこもり漫然と暮らすベン(田辺真也)は、弁護士の妻(鳥原ゆきみ)にも愛想をつかされている。そんな時、オンボロロボット、タング(生形理菜、斉藤洋一郎、長野千紘、渡辺寛中)が現れ、その修理のため米国や日本に旅立つ-。

 作品最大の魅力がこのロボット、タングだ。昔ながらの四角い風体で、男女の俳優2人が操作し、片方が台詞(せりふ)を担う。最初は機械的なタングだが、旅の過程でベンと心を通わせるようになると、血の通った存在に見えてくる。瞬きをし、目じりを下げ、首をかしげる仕草(しぐさ)など、人間の幼児のように愛らしい。壊れかけたロボットに、自らの境遇を重ね、愛情を注ぐベン。タングと親子のような関係になり、ベン自身も救われていく。

 “2人”の関係の微妙な変化を、ていねいに見せる舞台は胸を打つ。影絵や、物が飛ぶ様子を人力で見せるアナログな演出も、近未来とは対照的で楽しい。ただ物語が大きく展開しない1幕は、ホテルのダンス場面など盛り込み過ぎで、独立したショーとして見るなら楽しいが、冗長な印象だ。人間とロボットが寄り添い、生きる上で大切なものを再確認し、前に進もうとする2幕がよくできているだけに、惜しい。

 華やかな場面を無理に挿入せずとも、今は社会に居場所のない人間が試行錯誤しながら、一歩を踏み出す等身大の物語は、静かな共感を呼ぶ。“2人”の再生の過程にもっと焦点を絞り、長く愛される作品に育ててほしい。東京・自由劇場で11月29日まで。来年1~3月にも上演予定。(飯塚友子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。 

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