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【鑑賞眼】東京芸術劇場「ダークマスターVR」 乗っ取られた感覚、真実の世界とは

VR機器を装着して鑑賞する(前田圭蔵撮影・東京芸術劇場)
VR機器を装着して鑑賞する(前田圭蔵撮影・東京芸術劇場)

 何者かに自分の手足を好き勝手に動かされたなら、腹が立つし、気持ち悪い。では、感覚なら?

 VRゴーグルとヘッドホンを着用して鑑賞する「ダークマスター」の世界。同名漫画が原作で、脚色・演出は庭劇団ペニノを主宰するタニノクロウ。

 劇場内は真っ暗だ。自分の顔が反射するマジックミラーに仕切られた1人分のスペースに案内される。机と椅子があり、座って機器を装着させられる。

 気付くと、“わたし”は洋食屋の前にいた。クセの強そうなマスター(金子清文)が作るコロッケは見るからにおいしそう。食べていると耳に小さなイヤホンをねじ込まれた。「今日からこの店のマスターになれ」。イヤホンを通して料理の手順を指示するから、と言い残してマスターは2階に消える。

 目の前で湯気を上げる揚げたてのコロッケ、食欲をそそる香り、食器が鳴る音、咀嚼(そしゃく)音。一般的な演劇では、観客にとって舞台は一種の傍観者としてみるものだが、今作は観客自身が劇中世界の主人公(FOペレイラ宏一朗)として“出演”する。

 「VRで物語を作るのは大変だった」というタニノによって、ゴーグルで視覚を、ヘッドホンで聴覚を、そしてどこからともなく流れてくる香りで嗅覚を乗っ取られ、否応なしに主人公と同一化させられる。物語の道筋に沿うように、想像力を乗っ取られる。

 有名な思考実験である「水槽の脳」を思い出す。あなたが体験しているこの世界は、実は水槽に浮かんだ脳が見ている夢なのではないか。わたしが見ている世界は、本当に真実の世界なのだろうか。

 終了後、何者かにいいようにされたという原始的な不快感、怒りと不安が込み上げてきて、落ち着かなかった。

 10月9日~18日、東京都豊島区の東京芸術劇場シアターイースト、0570・010・296(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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