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メガヒット「鬼滅の刃」が改めて示す「メディアミックス戦略」の強さ 

ジュンク堂書店難波店の「鬼滅の刃」コーナー=大阪市浪速区(恵守乾撮影)
ジュンク堂書店難波店の「鬼滅の刃」コーナー=大阪市浪速区(恵守乾撮影)

 今年上半期、週刊少年ジャンプ(集英社)と週刊少年マガジン(講談社)のエース格作品が相次ぎ終了した。前者は吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんの「鬼滅の刃」、後者は春場ねぎさんの「五等分の花嫁」。両作品は漫画に留まらず、アニメや音楽、ゲームなどさまざまなメディアに展開しており、今後もアニメの続編が控える。連載終了後もファンの熱は覚めておらず、メディアミックスの強さを改めて示している。(文化部 本間英士)

小説版もベストセラー

 「鬼滅の刃」は令和最初のメガヒット作だ。書店で売り切れが相次ぐなど社会現象を巻き起こし、人気絶頂の先月、4年3カ月の連載に幕を下ろした。

 「鬼滅の刃」には特徴的な現象がある。漫画の累計発行部数(電子版含む)が昨年、異様な伸びを示したのだ。昨年4月時点で350万部だったのが、昨年11月には2500万部に急増。今年5月には6000万部を突破し、約1年で17倍も数字を伸ばしたことになる。オリコンなどのコミックランキングでは、同作が上位を独占することはざら。「『ONE PIECE』と並び、いま日本で一番売れている漫画」(出版関係者)といえる。

 “鬼滅ブーム”は漫画だけではない。出版取次大手の日販が集計・発表した今年上半期のベストセラーでは、同作を矢島綾さんが小説化した「鬼滅の刃 片羽の蝶」「鬼滅の刃 しあわせの花」が総合1、2位を独占。2冊の累計発行部数は176万部を超えた。一部ファンの間では髪の毛をキャラクターと同じ色に染めることも流行した。

アニメ化で子供がハマる

 急増のカギは「メディアミックス」にある。昨年4~9月、アニメ版が放送。高品質の和テイスト作画や音楽などが話題を呼び、アマゾンプライムビデオなど大手配信サービスで配信されたことから、それまで同作に触れたことがなかった層に届いたのだ。

 面白さに気づいた子供たちは、口コミやインターネットの評判を通じて友人に伝え、学校内で評判になる。アニメは7巻途中までの内容だったため続きが気になり、単行本を買う。そして、その流れは親世代や祖父母にも波及する-という流れが生まれた。主題歌を歌った歌手のLiSAさんが昨年末のNHK紅白歌合戦に出場し、主題歌「紅蓮華(ぐれんげ)」を披露したのは、世代を超えた鬼滅ブームを象徴する光景だった。

 もう一作、メディアミックスが効果を発揮したのが、2月に連載終了した「五等分の花嫁」だ。同作も昨年1~3月のアニメ化により人気が爆発的に広がり、昨年5月には講談社漫画賞(少年部門)を受賞。現在の累計発行部数は1250万部を突破した。

 特徴はヒロインである五つ子たちが放つそれぞれの個性と魅力にある。アニメ放送後、声優情報誌「声優グランプリ」で主演女性声優を特集した号が大きく売れ行きを伸ばすなど話題になった。講談社漫画賞の選考委員を務めたラブコメ漫画界の大家、赤松健さんは「ハーレム系美少女ラブコメの最終完成版」と称賛した。

アニメ化で魅力深掘り

 メディアミックスが効果的に働いた背景には、部数低下に伴う漫画雑誌の影響力低下がある。

 近年は漫画をスマホやタブレットで読む読者が増加。従来通りの紙雑誌を読む読者は減りつつある。断トツで売れている週刊少年ジャンプの発行部数(印刷証明付き)も、最新の数字では157万部(今年1~3月、日本雑誌協会発表)に低下。漫画アプリ「少年ジャンプ+(プラス)」が着実に影響力を強める一方で、“本家”はこの5年で80万部以上数字を落としている-という事情が背景にある。

 舞台、ノベライズ、スピンオフ漫画…。さまざまなメディアがある中で、ファン層を広げるうえで強さを発揮するのがアニメ。コロナウイルス禍で在宅時間が長い現在、この流れはいっそう顕著になりそうだ。

 「アニメ化作品の数が多いので、アニメ化しても大きなヒットにつながらないこともありますが、(平成25年の)『進撃の巨人』などアニメ化によって大きく認知を広げ、極端に売れ行きを伸ばす作品が近年まれにあります」

 こう指摘するのは、出版科学研究所の柴田恭平研究員。「逆に、読者の多くは昔のように連載雑誌を読んでいないので、知られていない作品が多いとも言えます」とも分析する。

 もちろん、両作品がここまでの大ヒットとなったのは、ストーリー展開など作品自体の魅力ゆえだという。

 「これは私見ですが、どちらもアニメ化によってキャラクターたちの魅力がより深く、大勢の人々に伝わったことが大きな要因なのではないかと思います」(柴田さん)

 インターネットの発展により、いわゆる「国民的作品」は昭和時代と比べて減った。両作品は、令和時代の「国民的作品」が今後生まれるうえで、一つのモデルケースとなりえるかもしれない。

■鬼滅の刃 舞台は人食い鬼がすむ大正時代の日本。家族を惨殺された主人公の少年・炭治郎(たんじろう)が、鬼と化した妹の禰豆子(ねずこ)とともに、家族を殺した鬼を討つため旅立つストーリー。残酷な運命に翻弄されながらも優しさを失わない炭治郎の姿や、生死の境にあっても理想のために懸命に戦うキャラクターたちの姿に共感する人が相次いだ。平成28年2月に連載が始まり、今年5月に完結。既刊20巻。今年10月に劇場版が公開予定。

■五等分の花嫁 主人公は高校2年生の風太郎。成績優秀で、転校してきた五つ子の家庭教師を務める。5人のヒロインはそれぞれ、お姉さんタイプの一花(いちか)、気は強いが情に厚い二乃(にの)、口数が少なくちょっと不思議な三玖(みく)、元気いっぱいで人懐っこい四葉(よつば)、不器用でまじめな五月(いつき)…と個性豊か。物語は成長した風太郎と五つ子の一人との結婚式から始まるが、誰が「花嫁」になるのか終盤まで分からない展開も話題になった。平成29年8月に連載が始まり、今年2月に完結。全14巻。来年1月にアニメ第2期が放送予定。

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