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「全国で〇人が見た」 視聴率調査、世帯から個人へ

 視聴率調査のビデオリサーチ社は30日から、誰がどれくらい見たかを示す「個人視聴率」の全国的な調査を始める。これまで4地区のみで調査していたものを全国に拡大、世帯数も増やし、従来の「世帯視聴率」と併せて公表する。より視聴の実態に即した数字を示すことで、伸び続けるインターネット広告に対しテレビメディアの価値を改めて訴求する狙いもある。 (文化部 石井那納子)

 視聴率は地上波、BS、CS、CATVなどで放送された番組が、リアルタイムでどれくらい見られたかを示す。ビデオリサーチでは、昭和30年代から統計学に基づき、各地区で無作為に対象世帯を決めて調査してきた。これが世帯単位で視聴された割合を表す「世帯視聴率」だ。

 例えば、A局を10世帯のうち5世帯で誰かが見ていれば「世帯視聴率」は50%。だが、その5世帯の中で何人が見ているかによって「個人視聴率」は変化する。テレビ視聴の多くを占めるとされる高齢層が1人でも見ていれば「世帯」の視聴率にカウントされていたが、これからは他の年代も含めて多くの人数に見てもらわなければ「個人」の数字が伸びない構造になる。

年齢や職業情報も

 「個人視聴率」の調査は、ピープルメーターと呼ばれる機械を調査世帯に設置。家族それぞれのボタンがあらかじめ設定され、テレビを見る人が自分のボタンを選択すると、視聴番組が自動で記録される。見た人の年齢、性別、職業などの情報が分かることになる。

 これまで関東と関西、名古屋、北部九州の4地区で行っていたが、これを全国27地区に広げる。さらに関東、関西、札幌では調査世帯数も拡大の予定だ。関東は900世帯から2700世帯、関西は600世帯から1200世帯、札幌は200世帯から400世帯とすることで調査の精度を上げる。

 「個人視聴率」の調査で、全国でどれくらいの人が見ているのかを表す推計値「全国視聴人数」も算出できるようになる。ただ、「個人視聴率」は、これまで慣れた数字である「世帯視聴率」よりも低く出ることが多くなるとみられる。このためビデオリサーチは一定期間、両方の数字を公表し周知するという。

「広告効果」に反映

 ビデオリサーチは、「個人視聴率」を強化する理由について、「視聴者の実像をはっきりさせ、これからのテレビメディアの価値を示し、環境変化に対応した指標を提供していくため」と説明する。視聴率データと、別のマーケティング調査との連携などを例に挙げ、「視聴者の関心分野をより詳しく分析することも可能になるだろう」と話す。

 電通が今月11日に発表した令和元年の国内の広告費に関する調査結果によると、インターネット広告が前年比19・7%増の2兆1048億円となり、同2・7%減で1兆8612億円だったテレビ広告を初めて上回った。利用者の嗜好(しこう)が反映されやすく、接触時間も長いスマートフォンの普及や、広告を出す企業のデジタルシフトが伸びを後押ししたとみられている。

 約300社の有力な広告主企業・団体が参加する「日本アドバタイザーズ協会」の担当者は、企業がかける広告費の変化として「ここ10~20年、『広告効果』に以前よりも厳しい目が向けられるようになった」と指摘する。消費者に届きやすい広告媒体であれば、テレビにこだわらない企業も出てきている。

 今後は、ターゲットとする消費者に届いているかどうか検証できることが重要だとし、「費用対効果を説明するためにも個人視聴率は必要なデータ。個人視聴率導入が刺激となって番組の多様化が進めば、広告媒体としてのテレビの魅力も増すだろう」と話す。

 一方、リアルタイムの視聴率だけでは測れない変化も一層進んでいる。録画機器の普及や民放番組のインターネット配信サイト「TVer(ティーバー)」の登場で、番組放送後に視聴することも容易になった。従来の「テレビの視聴率」では、広告効果も見えづらいとの指摘があり、ビデオリサーチは録画視聴率の調査拡充やネット上での視聴も調査に乗り出す方針だ。

番組つくりにも変化の可能性

 すでに民放キー局の中には、個人視聴率を重視する方針にシフトした局も出てきている。

 日本テレビは昨年1月から、局内の指標を個人視聴率に移行。新しい基準が制作現場にもたらした変化について、同社の小杉善信社長は定例記者会見で「視聴する側の属性をより強く意識するようになってきたと思う」と手応えを話した。

 ユニークな企画が多いテレビ東京も、今春から社内の指標を個人視聴率に変更する方針を明らかにしている。同局幹部は、「テレ東の番組は特定の層に刺さる(支持される)ものが多い。それをいかに幅広く、多くの人に見てもらうようにするか、アプローチを考えなければいけない。番組づくりが変わっていくのではないだろうか」と話す。

 算出方法の違いで、世帯視聴率で2桁を記録していた番組が、個人視聴率で1桁になる例は多い。制作現場のディレクターからは「2桁視聴率を目指して長年番組を作ってきた。1桁で高視聴率だといわれてもピンとこない」との声も。

 それでも4月の番組改編では、個人視聴率への移行を背景に、安定して世帯視聴率10%を獲得していた番組を終了させ、新番組に切り替える局もある。個人視聴率の本格導入で番組作りも変化が予想される。

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