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【漫画漫遊】「あおざくら 防衛大学校物語」二階堂ヒカル著/小学館 国防とアイロンかけの青春

「あおざくら 防衛大学校物語」二階堂ヒカル著/小学館 (c)二階堂ヒカル/小学館
「あおざくら 防衛大学校物語」二階堂ヒカル著/小学館 (c)二階堂ヒカル/小学館

 「異世界もの」というジャンルが人気だ。ごく普通の人がある日、ファンタジー世界に転生し、大活躍する-というのが大まかな筋書きだが、本作もある意味で異世界ものといえる。物語の舞台は、幹部自衛官養成が目的の防衛大学校。約2千人の学生が寮生活を送る独特の世界に、国防に興味のない主人公の青年、近藤勇美が飛び込んでいく。

 多くの異世界ものと決定的に異なるのは、入学後に厳しい訓練が待ち受ける点だ。近藤が防大に進学したのは主に家計の事情。秀才だが運動は全然ダメで、協調性もない。そんな頭でっかちの近藤が、細かすぎる規則に分刻みのスケジュール、連帯責任の腕立て伏せ…など、一般社会と異なる環境で鍛えられていく。

 災害派遣に外国からの侵略防衛。有事の際、幹部自衛官は理不尽な状況下でも冷静な判断を下さなくてはならない。だからこそ“鬼”の先輩たちは1年に「理不尽」を叩き込む。同期の中には、脱柵(脱走)や退校に追い込まれる者も。今も士官育成とはかくも過酷なものなのか…と驚くだろう。

 だが、同期たちが良くも悪くも型にはまっていく中で、近藤は考え続ける。「理不尽」は本当に必要なのか。いざというとき、命をなげうつ覚悟はあるのか-。いずれも答えのない問いかけに対し、己を飾らず真摯(しんし)に向き合う近藤。成長は著しく、周囲からの期待(と妬み)を集めていく様子は読んでいて快感だ。

 話の異様な幅広さも魅力だ。銃の扱いから制服のアイロンかけまでバラエティーに富んだ日常生活。海軍兵学校から続く伝統の「棒倒し」はひと際熱く、華やかな社交ダンスは普段とのギャップにしびれる。陸海空への配属など、物語の先の展開も全く読めない。

 長髪の学生が多いなど現実と違う点もあるが、そこはフィクション。熱い友情あり、恋愛あり、合コンもありの成長物語だ。ただ、守りたい人や国のために命をかける青春を描いた現実社会ベースの作品はあまりなく、正直グッとくる。自衛隊という普段なじみの少ない組織を理解する一助にもなるだろう。既刊14巻。(本間英士)

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